「来月設立」 準備委員、支援者に参加要請

毎日新聞2016年6月7日

http://mainichi.jp/articles/20160608/k00/00m/030/087000c

 【ソウル米村耕一、大貫智子】韓国政府が設立する元慰安婦支援のための「和解・癒やし財団」(仮称)設立準備委員を務める柳明桓(ユ・ミョンファン)元外交通商相が7日、ソウル市内で毎日新聞のインタビューに応じ、財団設立の時期について「7月半ばから末の間までに」との見通しを明らかにした。韓国政府は当初、設立のめどを6月中としていたが、事務手続きに一定の時間がまだ必要だという。

 また、準備委員は現在11人だが、財団発足後は理事が「最大15人」になると説明。柳氏は理事として残らず「残り5人は市民団体からも派遣してもらうのが良い」と述べ、元慰安婦支援団体の「韓国挺身(ていしん)隊問題対策協議会(挺対協)」などに参加を呼びかける方針を示した。「元慰安婦のおばあさんの心の傷を癒やすという目的を果たすには、それが一番だ」としている。

 挺対協などは昨年12月の慰安婦問題に関する日韓政府間合意に反対しており、財団に参加する見通しは立っていない。しかし、柳氏は「おばあさんの少なくとも3分の2以上が参加すれば、財団と挺対協の折衝も可能になると思う」と話し、まずは市民団体の支援を受けていない元慰安婦に理解を求めていく考えを明らかにした。

 韓国政府に登録された元慰安婦の女性は238人で、生存者は42人。柳氏は準備委や財団として元慰安婦や遺族、家族から改めて聞き取りし、個々の要望に応じたきめ細かい支援を実施する考えを示した。

 一方、ソウルの日本大使館前の慰安婦を象徴する少女像の移転問題に関しては「韓国政府も大きな負担を感じている」と述べた。多くの元慰安婦が財団からの支援を受ければ移転に向けた機運が自然に高まるが、移転を急ぐと日本政府が財団に拠出する10億円は、少女像撤去のためだとの感情的な反発が強まると指摘。「韓国政府に任せておくのが一番良い」と、日本側の冷静な対応を求めた。

 また、2012年に韓国側の要請で締結直前で延期になった日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)については「北朝鮮に関する情報は、日本より、韓国にとってより必要だ」と話し、日韓合意が着実に履行され、日韓関係が改善していけば、協定の早期締結も可能との見方だ。

 柳氏は、準備委発足前に財団のあり方を検討した「官民合同タスクフォース」の共同座長として、設立準備を巡る議論で中心的な役割を果たした。