徴用工像や慰安婦像の設置に冷める韓国世論 — 2019年5月12日

徴用工像や慰安婦像の設置に冷める韓国世論

徴用工像や慰安婦像の設置に冷める韓国世論
5/7(火)

徴用工像撤去で労組・市民団体は市役所に押し掛けたが
 釜山(プサン)日本国領事館の前に徴用工像を立てようとする市民団体と、それを阻止しようとする釜山市との間の対立が1年も続いている。最近、釜山市が徴用工像を強制撤去したことで両者の対立が再びマスコミの注目を浴びている。

 昨年の5月1日、韓国の2大労働組合である「民主労総」と「韓国労総」が中心になった市民団体「釜山労働者像建設特委」はメーデーを迎え、釜山の日本領事館前に設置された少女像(慰安婦像)の横に徴用工像を設置しようとした。

 しかし、警察の強力な阻止によって目標した位置に銅像を設立する計画は失敗、目標位置だった総領事館の裏門から40メートル余り離れたところに徴用工像を設置して解散した。その後の5月31日、釜山市は、徴用工像を電撃的に撤去して約7キロメートルほど離れた「日帝強制動員歴史館」に移した。

 今年の3月1日、3.1運動(抗日運動)100周年を迎えて、市民団体は歴史館から徴用工像を返してもらい、再び日本領事館前の設置を試みた。しかし、前回と同じく警察側によって制止され、銅像は近くの公園に移された。そして、4月12日に釜山市がまた、銅像を「歴史館」に移してしまった。

 これに対し、現在、民主労総と市民団体は釜山市庁に押しかけて市長の出勤を阻止するなどの行動に訴え、激しく抵抗している。韓国の多くのマスコミも民主労総の主張を側面支援し、多くの記事を出している状況だ。

 しかし、市民団体やマスコミの大騒ぎとは裏腹に、韓国国民の関心は極めて低い。

 韓国最大のニュースサイトであるネイバーニュースには、釜山市が徴用工像を撤去したことに関する関連記事が数十件も掲載されているが、コメントや推薦数はほとんど一桁に過ぎなかった。

 関連記事の中に唯一ネットユーザーたちの関心を集めたのは『朝鮮日報』が15日に報道した「民主労総のやりたい放題…釜山日本国領事館の前に「抗日通り」を作る」という記事だった。

 韓国最大の労働組合である民主労総が釜山日本領事館の前に不法設置された少女像と徴用工像の間の150メートルを「抗日通り」として造成すると宣言したことを伝えたニュースだ。

 『朝鮮日報』のこの記事にはまたたく間に1300件あまりのレスが付けられた。記事の内容に対して「腹が立つ」が2600個余り、「いいね」が30個余りの共感を得た。(15日12時現在)

 共感が多い順で並んだコメントには「民主労総がなくなってこそ韓国がよくなる」「法の上に君臨する方々」などの民主労総に対する反感が並んだ。
 
 さらに、「民族主義にはもううんざり」「文在寅が始めた反日戦線を拡大再生産する民主労総」「過去の日本侵略や植民地に対する警戒心なら博物館や記念館で十分」「あそこには日本領事館もあり、古い商業街で日本の観光客も多い。日本人観光客を追い出し、釜山を亡ぼすつもりか」などの行き過ぎた反日感情に対する批判が上位を占めた。

 韓国社会では今、反日のシンボルともいえる「少女像」や「徴用工像」設置に対する反対の声が次第に増えている。

 昨年3月1日、韓国マスコミを騒がした弘大前(ホンデアプ)の少女像の問題がよい例だ。外国人観光客に人気の観光スポットである弘大前はソウル市麻浦区に位置する弘益大学前の商店街。この付近に少女像を建てようとしていた市民団体が、弘益大学側や商人たちの反対によって計画を諦めた。

 2017年3月1日、麻浦区議会は「少女像建設決議案」を決定し、少女像の設置位置に対する議論に入った。当初は麻浦区上岩洞(マポグ・サンアムドン)に復元された「旧日本軍将校官舎」前が候補地として上がった。

 しかし、市民団体は交通が不便で、人通りが少ないという理由でここをあきらめ、新たな候補地として、弘大前の「歩きたい通り」の広場を提案した。「若者や外国人が多くて歴史意識の向上に効果的」という理由からだ。

 ところが、商圏の萎縮や管理の負担を訴える近くの商人たちの強い反対にぶつかり、諦めざるを得なかった。そして、三番目の候補地となったのが、弘益大学の正門前に位置した公園。とすると、今回は弘益大学側が猛反発した。

 学校側は「日本との国際交流に負担になる」という点などを挙げ、「設置に反対する意見書」を区役所に提出した。3月1日の前日、少女像推進委はトラックを動員して大学の正門まで少女像を運び、学校側は20人余りの警備要員を動員してトラックを阻止した。

 結局、2018年3月1日に予定されていた「少女像除幕式」は、両者の衝突によって現場が修羅場となり、中止となった。その後、麻浦区庁の中に少女像を建てるという案が提案されたが、区議員たちの反対でまたも立ち消えとなった。

 40日余りが過ぎた2018年4月13日になってようやく「麻浦中央図書館」という区立図書館に設置することができた。

 ソウル市に位置する国民大学も校内に少女像を設置する問題をめぐって、推進委と学校側が1年以上対立している。学校側は「多くの学生が反対する」という理由で「不可」の方針を維持している。

 大邱(テグ)の繁華街であるトンソン路に建てられる予定だった少女像は地元商店主たちの反発で近くの公園に移り、全羅南道光陽(チョンラナムド・クァンヤン)、京畿道広州(キョンギド・クァンジュ)など各地でも少女像の設立をめぐっても商店主たちと市民団体の葛藤が頻繁に発生している。

 2016年、釜山日本国領事館の前の少女像が一時期的に撤去された時、文在寅(ムン・ジェイン)民主党代表は「少女像撤去は清算されてない親日行為と等しい」と糾弾したことがある。だが、少女像や徴用工像の設置に反対する商店主たちは決して「親日派」ではない。彼らは自分の権利を守りたい普通の韓国国民なのだ。

朴英南 (ジャーナリスト 在ソウル)
最終更新:5/7(火) 13:10
ニュースソクラ
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