前川惠司 「下村・臼杵・挺対協」 — 2015年6月30日

前川惠司 「下村・臼杵・挺対協」

慰安婦問題解決を阻んだ朝日と韓国
『月刊正論』 2014年12月号

前川惠司(ジャーナリスト、元朝日新聞ソウル特派員)

支援団体に踏みにじられた元慰安婦たち

「日本が挺対協の人たちに妥協する必要性は絶対にない。あの人たちは、(元慰安婦の)おばあさんたちを踏みにじっています。おばあさんたちは、あの人たちにセカンドレイプされているようなもの。それをコントロールできない韓国政府は何とだらしないのか」

朝日新聞の「誤報取り消し」と「謝罪」でも、日韓間で慰安婦問題解決の兆しは見えない。どうしてか。

慰安婦問題の解決のために日本が官民一体で1995年に設立し、2007年に解散した「女性のためのアジア平和国民基金」(アジア女性基金)の元理事、下村満子さんに尋ねると、冒頭のように厳しく韓国の対応ぶりを責める言葉が返ってきた。

下村さんが言う・挺対協・とは、「韓国挺身隊問題対策協議会」の略称だ。慰安婦問題の解決を日本に迫る韓国の市民団体の一つで、女性人権団体を母体に結成された。

「日本政府は法的責任を認め、国家賠償し、責任者を処罰すべきだ」と主張し、ソウルの日本大使館前に慰安婦の像を建て、この像を囲むように毎週の「水曜デモ」をしていることで知られる。アジア女性基金による元慰安婦への「償い金」の支払いや首相の手紙による解決には強く反発。97年1月に、アジア女性基金が韓国で初めて、韓国の元慰安婦7人に、当時の橋本首相のお詫びの手紙とともに各500万円の「償い金」の目録を渡した直後には、「アジア女性基金の金を受け取ることは、ふたたび汚れた金で身を売ることだ」と、元慰安婦のおばあさんたちを締め上げて受け取り拒否を強要した。

下村さんはこうも語る。

「挺対協のメンバーと来日した慰安婦のおばあさんが、『宿泊所に閉じ込められ、外に出るなと言われて嫌になる』と電話をかけてきたこともあります。おばあさんたちは、内心で挺対協を恨んでいましたが、挺対協が怖いから、公の場に出てこいと言われれば出て行き、デモをしろと言われればデモをした。気の毒な弱者でした」

右も左も昔から反日
これでは元慰安婦のおばあさんたちを抑圧しているのは挺対協ではないかと言われても仕方ないだろう。いったい、どのような組織か。

挺体協の尹貞玉元共同代表は、韓国一の名門女子大、梨花女子大出身で、同大教授という経歴の持ち主だ。金大中元大統領の夫人とは同窓だ。「挺対協のほかの主要メンバーも、大学教授や弁護士、学者、金持ちなどのインテリ層ばかり」と関係者は口をそろえる。韓国社会の女性エリート層が主導する団体なのだ。

挺対協や元朝日新聞編集委員の松井やよりさんらが中心となった1992年、ソウルでの「アジア女性会議」や、「昭和天皇有罪」を宣言した2000年、東京での「女性国際戦犯法廷」の開催に協力した「日本基督教婦人矯風会」の高橋喜久江さんは、尹貞玉元共同代表とは80年代、韓国のキーセン観光などアジアの売買春反対運動で知り合ったと話している。このつながりのなかで、尹貞玉元共同代表は、韓国民主化以後に慰安婦問題で日韓共闘を始めたが、資料などは日本側にほぼ頼っていたと言われる。

ところで、キーセン観光は、当時は世界の最貧国だった韓国が同胞女性の肉体でドルを稼ごうとした、朴正煕政権の国策的な事業だった。それだけにキーセン反対運動の実際は、反日運動であり、同時に朴正煕政権打倒運動だったと見るのが正しいだろう。

65年に日韓国交正常化を実現させた朴正煕政権は、日本からの経済支援での国づくりを進める一方で、強烈な民族主義も掲げていた。娘の朴槿恵現大統領が、伊藤博文を暗殺した安重根の記念碑建立を中国に要請したことから今年1月、記念館が暗殺現場のハルビン駅にでき、日本社会の反韓感情をさらに刺激したが、ソウルの「安重根義士記念館」は70年に朴正煕政権の肝いりで開設されている。ハルビンの記念館は朴槿恵大統領にしてみれば、父の気持ちを継いだだけということだっただろう。

余談だが、日本で人気の青磁や白磁を、民族文化の継承として復活させたのも朴正煕大統領で、ソウル郊外の利川に陶芸村をつくった。もっとも、この陶芸再興の狙いには、キーセン観光に来た日本人男性客に売りつける土産品が何もない中で、日本人が好きな陶磁器に目をつけたこともあったそうだ。なかなか逞しい商才だ。さらに脱線するが、韓国の陶芸専門家から、昔と同じ土が韓国内でほとんど見つからないため、かつての味わいがうまく再現できないという話を聞いた。

韓国の「反日の殿堂」と呼ばれる天安市の独立記念館は、独立運動家などが日本の官憲に残酷な取り調べを受けている蝋人形の展示や、悲鳴の擬音などで日本でも知られている。ここも全斗煥軍事独裁政権時代に建設されている。慰安婦問題に火がついた92年にソウルの日本人学校中等部の生徒が見学に出かけた様子がテレビ朝日で放映された。このときの後日談を、当時の校長から聞いたことがある。日本に留学中の韓国人青年から「韓国の子どもたちに自国の正しい歴史を教えず、植民地時代が残酷であったとだけ強調し、いたずらに反日感情を掻き立て、日本を憎むことが憂国だと勘違いさせるところが、独立記念館だと思っている。あそこは軍事独裁政権が、自らの非道を誤魔化すために、国民に募金させて作った施設だ」という手紙が届いたというのだ。

日本では一般的に、朴正煕や全斗煥の反共政権は親日で、進歩派左翼政権は反日だと感じている人たちが多いようだが、どちらにも己の正当化の手段としての反日の論理が内包されていることが分かるエピソードだ。
反日と韓国ナショナリズムは一体化している。それは、「いつかまた、日本が侵略してくる」という恐怖心が韓国人の深層心理のなかに潜んでいるからだろう。解放直後に、「米国の奴らを信じず、ソ連の奴らにだまされるな。日本の奴らが立ち上がるから、朝鮮人は気をつけろ」という言葉が流行ったことは、元東亜日報記者の李鍾珏さんが、「韓国いまどき世相史」(亜紀書房)で書いている通りだ。

日本人支援者も入国拒否

話を慰安婦問題に戻そう。挺対協をはじめ韓国側に非があると指摘するアジア女性基金の関係者は、下村さんだけでない。今年8月に韓国メディアの訪日取材団のインタビューに応じた同基金理事の大沼保昭明治大学特任教授は「どれほど謝罪しても韓国は満足しないという空気が日本にある」と述べ、「日本の右傾化をもたらした理由の一つに、日本側の解決努力に対する韓国側の冷ややかな評価をあげた」と韓国で報じられた(同月31日、韓国聯合通信ウェブ版)。大沼教授は、挺対協が、慰安婦問題を、「慰安婦だったおばあさんたちを幸福にするために解決する」という観点でなく、「韓国社会に根深い反日問題へと持って行った」とも指摘している。

韓国メディアへの発言の真意を大沼教授に直接尋ねた。「韓国の市民社会は成熟していると期待していた。しかし、そうでなかったことにもがっかりしているが、最後までお互いに絶望せずにやろうよ、そのために韓国のメディアも反省して欲しい」という主旨での発言だったそうだ。韓国の取材団も大沼教授に、「私たちも、挺対協の言い分だけをうのみにしていた点は、問題があった」と打ち明けていたそうだ。

元慰安婦のおばあさんたちは、日本に国家賠償を求める「東京従軍慰安婦訴訟」を91年に起こした。この訴訟の支援を日本側で続けた「日本の戦争責任をハッキリさせる会」の臼杵敬子代表は、韓国人元慰安婦が初めて「償い金」などを受け取った97年1月の約半年後、韓国当局から入国禁止措置を受けた。
臼杵さんは入国拒否についてこう語る。

「入国拒否になる前に、韓国大使館から接触があった。訴訟の打ち合わせもあるし、韓国のためにやっている人間をどうして入国拒否するのかと聞いたら、挺対協が法務省と外交通商省に、臼杵は基金を受け取れと言って動いているから入国させるなと申し入れたという返事だった」

挺対協に逆らって金を受け取ったおばあさんたちは、強烈ないじめにあっていた。脅迫電話が絶えず、日本の支援者が1万円ずつ出しあって、電話機を録音機能のあるものに替えた。ただ、おばあさんたちもやられる一方ではなかったようだ。臼杵さんの話だ。

「外交通商省の担当者が挺対協の方ばかり見ていて、自分らの意見を封殺していると怒ったおばあさんたちが、外交通商省に押しかけて、エレベーターの前で担当者のネクタイを引っ張るようなこともあった」

そうした動きのバックに臼杵さんがいるのではと疑った末の入国禁止でもあったのだろう。日本からの「償い金」を受け取ったために挺対協のメンバーに罵倒されたおばあさんの一人は、こう悔しがったという。

「私だって、母が幼いときに亡くならなければ、尹貞玉さんと同じように梨花女子大ぐらい卒業できた」

「在野」勢力が次の権力となる韓国の政治風土
それはともかく、一市民団体がどうして政府まで動かし、入国禁止措置を取らすことまで可能なのか。それは、民主化闘争を担った反政府団体の発言権が、87年の民主化実現で一気に高まったからだ。93年の金泳三政権誕生とともに、日本側の解決策としての河野談話発表からアジア女性基金設立への流れが始まったのだが、大沼教授は、「この問題は日韓基本条約の請求権協定で解決しているが、道義的立場からアジア女性基金を作ったことを、村山内閣の五十嵐広三官房長官が直接、金泳三大統領に伝えた。韓国側は批判したり妨害したりしないとの回答を得て、本格的にスタートしたとたんに、挺対協などの支援団体が強硬に反対し、それが日韓のマスコミに増幅して報道された」と振り返る。

96年、慰安婦を「性奴隷」と規定し、日本に国家補償を要求するクマラスワミ報告が国連人権委員会に提出されると、挺対協と同調する支援団体はさらに勢いづく。その暴風雨下で金泳三政権は揺れに揺れ、アジア女性基金を支持するほとんど唯一といえる団体だったハッキリ会代表への入国拒否へとなったのだ。

韓国では、その時々の反体制派などを「在野」「運動圏」と呼ぶ。南北に分断し、地域、保守と進歩、世代、階層などの激しい対立が重なり合う韓国には、今日の敗者が明日の勝者となる政治風土がある。在野とは、そうした「明日の権力者」がだれになってもおかしくない、韓国の対決の社会が生んだ勢力だ。

98年の左派進歩政権、金大中政権の誕生で、アジア女性基金の運命は決定づけられたと言える。軍事独裁政権下で金大中氏の反独裁闘争の一翼を担った層が加わる挺対協は、まさに「権力」になったからだ。

その年の雑誌「世界」10月号のインタビュー記事で、訪日を前にした金大中大統領自身が、「我々は国民基金のお金をハルモニ(おばあさん)たちが受け取るのに反対しました」と述べ、アジア女性基金という卓袱台をひっくり返したことを強調した。前政権を完全否定することで新政権が正当性をアピールするのが常の朝鮮半島の長い政治風土のなかで「在野」が権力と一体となった時、どのような力を発揮するかの好例でもあるが、こうした事態に至った時、日本政府や関係者の対応はいかがだったか。検証しなければならないところだろう。それにしても、当時の小渕恵三首相とともに、「21世紀に向けた日韓パートナーシップ」を宣言し、日韓関係の改善に力を発揮したと評価されがちな金大中大統領だが、慰安婦問題で見る限り、政権の沃土といえる「在野パワー」に煽られ、今日の日韓の深刻な対立を引き起こした大統領だった、ともいえるのではないか。日本側に、在野を説得する迫力が欠けていたことが、最大の要因ではあるにしても…。

大沼教授、五十嵐官房長官、原文兵衛アジア女性基金初代理事長、それに東京従軍慰安婦訴訟の高木健一弁護士は、アジア女性基金に先立つ、サハリン残留韓国人問題で、訴訟の結末とは別に、日本政府の資金でサハリン残留韓国人の韓国永住帰国を実現させた。その成功体験を、アジア女性基金に重ねすぎたとの見方もある。尋ねると大沼教授は、「サハリンとの違いは、超党派の国会議員による応援団ができたか、できなかったかにある」と答えた。なぜ、できなかったのか。そのことも今後の検証課題だろう。

大沼教授は、朝日新聞がアジア女性基金の償い金などを否定的にとらえ、「元慰安婦個人への国家補償が正しい」という主旨の報道を主に社会面で続けたと残念がる。先の下村さんも、「国交正常化の時の請求権協定からして、挺対協が主張するような国家補償はありえない」と見ている。そうした中で興味深いのは、先の大沼教授のインタビューで、韓国メディアの記者は、慰安婦報道の反省として、「挺対協を鵜呑みにした」ことを挙げていることだ。

このことは、朝日新聞などの日本マスコミの当時の報道姿勢や論調に韓国マスコミが影響を受けて、挺対協の主張が韓国でより説得力をもっていく結果になったということを物語っているのではないか。

韓国では、軍事独裁政権の言論弾圧下、事実を追えば記事が書けなくなるという現実の中での「事実」の軽視、一方での新聞資本と政権との「もたれ合い」への疑惑などで、国内メディアより日本の報道が影響力を持つ時期が長く続いた。

92年1月の宮沢喜一首相(当時)の訪韓直前、日本軍が11歳の韓国人少女を慰安婦にして弄んだなどの根拠のない話を東亜日報が報じ、韓国社会は激高したが、これは、作り話だった「吉田証言」を明らかに下絵にした誤報であっただろうことが、好例のひとつだ。

朝日新聞は、「吉田証言」などをめぐる誤報が、日韓関係などに与えた影響を第三者委員会が検証するとしているが、慰安婦報道の全体を、社説やコラムを含めて検証しなければ、朝日新聞の慰安婦報道がどのように韓国社会に刷り込まれていったかは分からない気がする。

韓国の大学教授らの話では、現在の挺対協尹美香代表の夫らが北朝鮮スパイとして疑われ有罪判決を受けたことや、これまでの活動内容から北朝鮮のために活動する従北団体ではないかとの見方が出て、韓国社会でも挺対協への批判が強まり、影響力は減っているという。だからだろうか、韓国メディアによる大沼教授へのインタビューでは、アジア女性基金の再稼働による問題解決の可能性も問われた。大沼教授は「現在の日本の右傾化した雰囲気のなかでは受けいれることはできないだろう」との見方を述べている。こうした卒直な見方を、韓国はどう受け止めるだろうか。

200年後の補償は誰のため?

韓国政府に登録された元慰安婦236人のうち、今年6月の政府「河野談話検討チーム」の報告書では、償い金を受け取ったのは61人だった。
冒頭の下村さんにもう一度語ってもらおう。

「挺対協の人たちは、200年戦争だ、とも言っていた。彼らが反日運動をやるのは自由だけど、おばあさんたちがどんどん死んで、仮に国家賠償が20、30年後に取れたとしても何なのですか、みんな死んでいるでしょうと、いくらいっても、おばあさんが死のうが生きようが、我々には関係ないと言っていた。おばあさんたちに償い金をもらわれてしまったら、彼らの運動は終わってしまうから、人権とか尊厳とかは口先だけでおばあさんのことを反日運動の看板として利用しているだけだ」

臼杵さんは、こう語る。

「ジャングルの中を兵隊と手をひっぱりあい進んだおばあさんもいた。部隊の中に、おばあさんを助けた兵隊さんが何人かいたケースもあったろう。恋仲になった日本の兵隊の名前を万年筆のペン先で彫った刺青を右手にしていたおばあさんがいた。平和な時が来たら一緒になろうねと約束して、彫りあったようだったが、その広島出身の飛行機乗りは戦死してしまったそうだ。日本の兵隊だって1銭5厘で集められた命。お互いに青春時代、いつ死ぬか、殺されるか分からないなかで出会った、ある意味ではピュアな間柄の面もあった。しかし、おばあさんたちは、挺対協の調査でそんな一面は言えなかっただろう」

おばあさんの相当数は、体験のすべてを世に向かって語ることなく亡くなった。

大沼教授は、性差別や女性への抑圧をなくし、女性の権利拡大を目指す世界的なフェミニズム運動の高まりが、挺対協による国際的な運動の展開に時の利を与えたと見ている。それは確かかもしれない。

臼杵さんが明らかにする、おばあさんたちの「思い出話」は、フェミニズム運動などの勇ましい言葉とは無縁のつぶやきでしかないかもしれない。

しかし、20世紀が戦争と帝国主義の時代だったとしても、その実相は、おどろおどろしい被害の誇張だけでは捉えきれないはずだ。辛い日々であったことは変わりないだろうが、同時に夢や幸福、人と人とのつながりがあったことも伝える支援運動であったなら、日本社会の受け止め方は、今とはもっと違っている結果であったかもしれない。

もしかしたら、慰安婦問題の解決の糸口は、日本政府が時間をかけ、おばあさんたちの心のある事柄を丁寧に掬っていき、そこから拾い上げた事実を残そうとする作業のなかにあったのかもしれない。

最近の産経新聞元ソウル支局長起訴事件。そして、今回の仁川アジア大会でもそうであったが、国際的なスポーツ大会で相手国選手への非礼や不正疑惑が当たり前のように飛び出すのは、自分たちが勝てばよい、俺たちの主張さえ通ればいいというウリナラ(我が国)主義が、依然として跋扈しているからだろう。
挺対協もまた、普遍的な法治や公正よりも、民族的ナショナリズムがすべてとする韓国社会の裏返しの姿のひとつかもしれない。

挺対協を構成する女性団体は、ベトナムでの韓国軍の残虐行為や米軍慰安婦問題へと、追及のテーマを変えつつあるように見える。二つはともに、朴槿恵大統領の父親の朴正煕時代に起きた韓国現代史の恥部でもある。韓国在野は、すでにポスト朴槿恵を巡って、保守勢力との政治闘争に入ったようだ。絶えず、前政権を生贄にしようと牙をむく政治風土のなかで、朴槿恵政権が日本との妥協に舵を切れるかどうか。日韓国交正常化50年に突き刺さるとげは容易に抜けそうはないようだ。

http://megalodon.jp/2015-0630-2220-03/ironna.jp/article/687

https://web.archive.org/web/20150316163048/http://ironna.jp/article/687

[資料] Nazi War Crimes & Japanese Imperial Government Records Interagency Working Group —
[下訳] ソウル市女性賞にキム・ボクトン —

[下訳] ソウル市女性賞にキム・ボクトン

ソウル市女性賞に慰安婦被害者キム・ボクトンおばあさん

日本軍慰安婦被害者として被害実状を告発するのに先に立ってきたキム・ボクトン(89)おばあさんが今年ソウル市女性賞大賞受賞者に選ばれた。

ソウル市は30日キムおばあさんが日本軍慰安婦被害者として被害実状を一つ一つ告発して日本政府の公式的な謝罪を促して戦争で被害を受けた女性たちの人権のために世界全域で活発に活動していると選定理由を明らかにした。

キムおばあさんは”まだ日本軍慰安婦問題が解決されなかったし私が特にある活動もないようで感謝した心と同時に複雑で息苦しい気がする”と話した。
キムおばあさんはまた”それでもこのように賞を受けることになったことはソウル市が私たちの問題解決に一緒にするという意だと考えて生存者が生きている時日本政府が謝罪して賠償して子供たちに平和な世の中を譲りたい”と受賞所感を明らかにした。

ソウル市女性像最優秀賞にはクリダヒョプトンジョハプのユ・ギョンヒ代表(個人)と対韓お母さん会ソウル市連合会(団体)が選ばれた。

優秀賞には労務士キム・ジェジンさんと松坡区(ソンパグ)守禦使と奉仕団長チェ・サンユ姉氏、動作気持ち集まれ(団体)が選ばれた。

授賞式は7月11日光化門(クァンファムン)中央広場で開かれる2015両性平等週間(昼間)記念式で開かれる。

聨合ニュース2015/06/30

http://megalodon.jp/2015-063047/www.yonhapnews.co.kr/bulletin/2015/06/30/0200000000AKR20150630023100004.HTML?input=www.twitter.com

キャロル・グラック「史実は動かない。軍のための組織的な売春があった」(187人声明) —

キャロル・グラック「史実は動かない。軍のための組織的な売春があった」(187人声明)

———————————————————–

(インタビュー)米歴史家らの懸念 米コロンビア大学教授、キャロル・グラックさん

米国を代表する日本研究者らが、日本の歴史認識をめぐり、過去の過ちの「偏見のない清算」を呼びかける声明を発表した。そこに込められた思いは何か。なぜ、400人以上の研究者が賛同したのか。声明の作成に携わり、日本だけでなく、世界で「記憶」の研究を続けるコロンビア大学のキャロル・グラック教授に聞いた。

――声明への反響をどう見ていますか。

これほど注目を浴びるとは思っていませんでした。最終案に署名した187人は組織的に集めたわけではなく、研究分野も様々で、政治的信条も保守からリベラルまで幅広い。これだけ多様な人が支持しているのだから、声明はバランスが取れていると思います」

「きっかけは3月末にシカゴであったアジア関連の学会です。数人の研究者が慰安婦問題をめぐって日本の歴史家たちを支援したいと。取りまとめ役が草案を作って約30人に送り、全員でメールをやりとりして文章を練りました。通常は1人が書いて賛同者を募ることが多く、こうした共同執筆は私も初めての経験でした」

――日本国内では、賛否様々な反応がありました。

「ええ。私たちを『反日』だと非難する人たちもいました。しかし、署名者の多くは1980年代、米国などで『日本の擁護者』だと言われていたのです。日本に甘すぎる、と。だからそうした批判を受けると少しおかしな気持ちになりますが、決して反日などではありません」

「ほかにも驚きがありました。『賛同したい』という日本関連研究者が次々と名乗りを上げてきたのです。しかも世界中から。事務的な都合で締め切りを設け、最終的には約460人になりましたが、まだ希望者は増えています」

――なぜ、これほどの関心を呼んだのでしょうか。

「戦後60年の節目では、慰安婦問題が今のように注目を受けることはありませんでした。その後の10年間に変化があったのです。まず日本国内です。安倍晋三首相が2度目の就任をし、日本の世論や政治状況、安全保障をめぐる環境も変わった。戦後70年の『安倍談話』に期待するナショナリズムも国内で高まっています」

「国際政治の状況も変わりました。思わぬ形で慰安婦問題が東アジアにおける戦後70年の焦点になり、海外でも多くの人が安倍談話に注目するようになった。日本研究者だけではなく、政治家もです。オバマ米大統領やメルケル独首相らがこの問題について言及をしているように」

■     ■

――談話では慰安婦に触れざるを得ないのでしょうか。

「慰安婦問題は安倍首相だけが作り出したわけではありません。韓国はこの数年、積極的に国内外で問題にし、日本の責任を強調している。韓国系米国住民らの働きかけもあり、2007年には米下院で日本の責任を問う決議が採択された。中国や韓国は以前から『日本の歴史認識』を政治的に利用してきましたが、最近は慰安婦問題がその代表になっています」

「ただ皮肉なのは、慰安婦問題は過去にほぼ解決していたということです。宮沢喜一元首相は自ら韓国で謝罪したし、河野談話も発表された。その後も日本は何度も謝っている。しかし、安倍首相が河野談話を検証し、見直す趣旨のことを言い始めたため、問題が再燃したのです。日本の人はよく『謝罪疲れ』を口にします。それは分かりますが、見直しを言い出したからこそ、改めて謝罪が注目されるようになった」

――グラック教授は2年前のインタビューで、安倍首相は「地政学的無神経」ではないかと指摘されていましたね。

「いえ、彼はもう無神経とは言えないと思います。もし地政学的な状況に無頓着だったら、一度言い出した『河野談話の見直し』を撤回したりはしないでしょう。しかし、問題を抱えているのは事実です。今、安倍首相は国内の期待と海外の評価の間で、難しいバランスを求められています」

――その中で再度、慰安婦問題に向き合う必要がある、と。

史実は動きません。自発的に慰安婦になった人や募集に応じた人もいるのは確かですが、軍のための組織的な売春があったのは否定できない。当時は問題がなかったとしても、現在の価値観に照らすと許容できない行為だったのは間違いない。長い間、戦時下の性暴力は当然とされていましたが、今では人道に対する罪に位置づけられている。それに、重要なのは人数ではない。ナチスによるホロコースト犠牲者の細かい数について誰が問題にするでしょうか」

――現在の価値観を過去の行為に適用するということですか。

「価値観は時間を経て変化しますが、事実は変わりません。米国は最も長く奴隷制度を維持していた国の一つであり、それは明らかに間違っていた。後遺症は今もある。でも、少なくとも現在の米国には奴隷制度はない。史実を否定するのではなく、『今だったらしない』と認めることが大切です」

■     ■

――声明では日本だけでなく、韓国や中国の「民族主義的な暴言」についても指摘しました。

「この表現は、最初の草稿から入っていました。いずれの国もナショナリズムに歴史を利用しています。国内向けの行動ですが、大変に危険です。だからこそ海外の研究者や政治家がこの問題を気にしているのです。東アジアが歴史問題をめぐって不要な対立に陥ることは誰も望んでいません」

「もっとも、問題は東アジアだけで起きているわけではない。東欧でも第2次大戦の記憶をめぐって民族主義的な動きが急です。ロシアのプーチン大統領がウクライナについて話す時、比較として戦時中の話を持ち出すように」

――なぜ、今なのですか。

「第2次世界大戦は70年前に終わったが、戦後の時間の流れは均一ではなかった。冷戦のさなか、西欧では経済や安全保障をめぐって仏独が共に行動する必要があり、早くから共通の記憶の形成に向けて動きました。それでも半世紀かかりましたが、1995年には各国の首脳が共に戦後50年を記念する行事に参加しました」

「しかし、戦後50年の行事では東欧の存在が欠落していた。東欧の戦後が本格的に始まるのは、冷戦が終結し、ソ連が崩壊した91年です。その時から多くの国が戦争に関する記憶を取り戻そうと活動を始め、ドイツだけでなくソ連から受けた被害についても語られるようになる。東アジアも東欧に似ているのです。日本では長く、米国との戦争ばかりが記憶されていた。その影響は『太平洋戦争』という名称にも表れています。でも冷戦が終わり、アジアの国々とも向き合う必要が生まれた。日本は自国の状況が特殊だと思いがちですが、そんなことはありません」

――それでは、緊張はどう解決すればいいのでしょう。

「完全には解消できなくとも、象徴的な行動でかなり緩和されることがあります。西ドイツのブラント元首相が70年にワルシャワの記念碑の前でひざまずいたのが典型です。あの場では特に発言はせず、謝罪もしていない。それでも、あの姿は今でも語られています。安倍首相がソウルで慰安婦像に献花をすれば、いったい誰が批判できるのですか」

――声明でも安倍首相の「大胆な行動」に期待していますね。

「この部分は、安倍首相が米国で演説をした後に加えられましたが、個人的には大胆な行動でなくてもいいと思っています。でも、政治的に賢い行動を期待しています。日本は素晴らしい国で、世界中から尊敬を集めている。巨大なソフトパワーも持ち合わせています。それを他の国の教科書会社に抗議するために使うのではなく、賢く用いて欲しい。慰安婦問題をいつまでもくすぶらせず、前へ進むことは可能なはずです」

(聞き手・中井大助、真鍋弘樹)

Carol Gluck 1941年生まれ。専門は日本近現代史、歴史と公共の記憶。米アジア学会(AAS)元会長。

■取材を終えて

最近、「反日」という言葉を頻繁に見かける。今回の声明に対しても、そうした言葉を使った批判がある。しかし、グラック教授も言うように、賛同者たちは多くの時間を日本で過ごし、日本研究に人生を捧げてきた。その人たちを「反日」というのであれば、いったいだれが「親日」なのだろうか。戦後70年の首相談話に海外から注目が集まるのは、決して「日本批判」のためではない。

(中井大助)

◆キーワード

<米国の日本研究者らの声明> 「日本の歴史家を支持する声明」として、5月初めに英語と日本語で発表された。第2次世界大戦以前の「過ち」について「全体的で偏見のない清算」を呼びかけ、慰安婦問題などで安倍晋三首相の「大胆な行動」に期待を表明した。当初の署名者は187人で、ハーバード大のエズラ・ボーゲル名誉教授やマサチューセッツ工科大のジョン・ダワー名誉教授ら、著名な日本研究者が多数含まれる。賛同者は増え続け、5月下旬には約460人となった。

朝日 2015年6月5日

http://digital.asahi.com/articles/DA3S11791818.html

187人声明は日本に対する差別 酒井信彦 —

187人声明は日本に対する差別 酒井信彦

「朝鮮戦争でもベトナム戦争でも、慰安婦的存在は常にあった。米国人であるグラック教授には『現在の価値観に照らして』、ぜひ、これを告発・糾弾してもらいたいもの」

——————————————————

【朝日新聞研究】慰安婦の特別視は日本に対する「偏見」「差別」「迫害」

安倍晋三首相が、米上下両院合同会議で演説(4月29日=日本時間30日未明)して間もない5月4日、欧米を中心とした日本研究家が、日本の歴史問題についての「偏見のない清算を」と呼びかける共同声明を発表し、安倍首相に大胆な行動を求めた。朝日新聞は5月8日の紙面で大々的に取り上げ、声明の全文を載せている。

その中で明らかなのは、歴史問題とは結局、慰安婦問題に帰結するのであり、それについて以下の言及が核心の部分である。

「20世紀に繰り広げられた数々の戦時における性的暴力と軍隊にまつわる売春のなかでも、『慰安婦』制度はその規模の大きさと、軍隊の組織的な管理が行われたという点において、そして日本の植民地と占領地から、貧しく弱い立場にいた若い女性を搾取したという点において、特筆すべきものであります」

朝日新聞は6月5日、声明作成の中心人物である、米コロンビア大学のキャロル・グラック教授の長文インタビューを載せている。そこでは、慰安婦問題が再燃したのは、安倍首相が河野談話の検証を行ったからだとし、「当時は問題がなかったとしても、現在の価値観に照らすと許容できない行為だったのは間違いない」と言っている。

韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領は昨年9月24日、国連総会で、「戦時の女性に対する性暴力は時代、地域を問わず、明らかに人権と人道主義に反する行為だ」と演説した。時代と地域を問わないと言うのだから、古今東西、常に存在する、極めて普遍的な問題ということである。

米国の日本占領期にも、朝鮮戦争でもベトナム戦争でも、慰安婦的存在は常にあった。米国人であるグラック教授には「現在の価値観に照らして」、ぜひ、これを告発・糾弾してもらいたいものだ。

要するに、日本の慰安婦を特別視することこそ、日本に対する卑劣極まりない、「偏見」「差別」「迫害」以外のなにものでもない。

ところで、朝日新聞は6月11日夕刊と12日朝刊に、ニューヨークの金成隆一記者による注目すべき記事を掲載している。同紙が入手した国連内部監査部の報告書によると、中米のハイチ、アフリカの南スーダン、コンゴ民主共和国、リベリアに駐屯する国連PKO(平和維持活動)部隊の隊員による、現地女性に対する「性的な搾取と虐待」についての申し立てが、2008年から13年の6年間で、約480件に達していることが明らかになったという。

軍隊と性の問題は、現在においても厳然と存在する、普遍的な問題であることが良く分かる。しかも支援物資を与える見返りに、性的関係を要求するというのだから、明らかな強制であり、慰安婦に比較して、はるかに悪質ではないのか。

しかし、朝日のこの記事には、慰安婦のことはまったく出てこない。

■酒井信彦(さかい・のぶひこ) 元東京大学教授。1943年、神奈川県生まれ。70年3月、東大大学院人文科学研究科修士課程修了。同年4月、東大史料編纂所に勤務し、「大日本史料」(11編・10編)の編纂に従事する一方、アジアの民族問題などを中心に研究する。2006年3月、定年退職。現在、夕刊紙や月刊誌で記事やコラムを執筆する。著書に「虐日偽善に狂う朝日新聞」(日新報道)など。

zakzak 2015.06.30

https://web.archive.org/web/20150630092610/http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20150630/dms1506301550002-n1.htm

https://web.archive.org/web/20150630092831/http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20150630/dms1506301550002-n2.htm

http://megalodon.jp/2015-0630-1826-20/www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20150630/dms1506301550002-n1.htm

http://megalodon.jp/2015-0630-1828-44/www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20150630/dms1506301550002-n2.htm

187人声明 日本語 — 2015年6月29日

187人声明 日本語

日本の歴史家を支持する声明
下記に署名した日本研究者は、日本の多くの勇気ある歴史家が、アジアでの
第二次世界大戦に対する正確で公正な歴史を求めていることに対し、心から
の賛意を表明するものであります。私たちの多くにとって、日本は研究の対
象であるのみならず、第二の故郷でもあります。この声明は、日本と東アジ
アの歴史をいかに研究し、いかに記憶していくべきなのかについて、われわ
れが共有する関心から発せられたものです。
また、この声明は戦後七〇年という重要な記念の年にあたり、日本とその隣
国のあいだに七〇年間守られてきた平和を祝うためのものでもあります。戦
後日本が守ってきた民主主義、自衛隊への文民統制、警察権の節度ある運用
と、政治的な寛容さは、日本が科学に貢献し他国に寛大な援助を行ってきた
ことと合わせ、全てが世界の祝福に値するものです。
しかし、これらの成果が世界から祝福を受けるにあたっては、障害となるも
のがあることを認めざるをえません。それは歴史解釈の問題であります。そ
の中でも、争いごとの原因となっている最も深刻な問題のひとつに、い
わゆる「慰安婦」制度の問題があります。この問題は、日本だけでなく、韓
国と中国の民族主義的な暴言によっても、あまりにゆがめられてきました。
そのために、政治家やジャーナリストのみならず、多くの研究者もまた、歴
史学的な考察の究極の目的であるべき、人間と社会を支える基本的な条件を
理解し、その向上にたえず努めるということを見失ってしまっているかのよ
うです。
元「慰安婦」の被害者としての苦しみがその国の民族主義的な目的のために
利用されるとすれば、それは問題の国際的解決をより難しくするのみならず、
被害者自身の尊厳をさらに侮辱することにもなります。しかし、同時に、彼
女たちの身に起こったことを否定したり、過小なものとして無視したりする
ことも、また受け入れることはできません。二〇世紀に繰り広げられた数々
の戦時における性的暴力と軍隊にまつわる売春のなかでも、「慰安婦」制度
はその規模の大きさと、軍隊による組織的な管理が行われたという点におい
て、そして日本の植民地と占領地から、貧しく弱い立場にいた若い女性を搾
取したという点において、特筆すべきものであります。
「正しい歴史」への簡単な道はありません。日本帝国の軍関係資料のかなり
の部分は破棄されましたし、各地から女性を調達した業者の行動はそもそも
記録されていなかったかもしれません。しかし、女性の移送と「慰安所」の
管理に対する日本軍の関与を明らかにする資料は歴史家によって相当発掘さ
れていますし、被害者の証言にも重要な証拠が含まれています。確かに彼女
たちの証言はさまざまで、記憶もそれ自体は一貫性をもっていません。しか
しその証言は全体として心に訴えるものであり、また元兵士その他の証言だ
けでなく、公的資料によっても裏付けられています。
「慰安婦」の正確な数について、歴史家の意見は分かれていますが、恐らく、
永久に正確な数字が確定されることはないでしょう。確かに、信用できる被
害者数を見積もることも重要です。しかし、最終的に何万人であろうと何十
万人であろうと、いかなる数にその判断が落ち着こうとも、日本帝国とその
戦場となった地域において、女性たちがその尊厳を奪われたという歴史の事
実を変えることはできません。
歴史家の中には、日本軍が直接関与していた度合いについて、女性が「強制
的」に「慰安婦」になったのかどうかという問題について、異論を唱える方
もいます。しかし、大勢の女性が自己の意思に反して拘束され、恐ろしい暴
力にさらされたことは、既に資料と証言が明らかにしている通りです。特定
の用語に焦点をあてて狭い法律的議論を重ねることや、被害者の証言に反論
するためにきわめて限定された資料にこだわることは、被害者が被った残忍
な行為から目を背け、彼女たちを搾取した非人道的制度を取り巻く、より広
い文脈を無視することにほかなりません。
日本の研究者・同僚と同じように、私たちも過去のすべての痕跡を慎重に天
秤に掛けて、歴史的文脈の中でそれに評価を下すことのみが、公正な歴史を
生むと信じています。この種の作業は、民族やジェンダーによる偏見に染め
られてはならず、政府による操作や検閲、そして個人的脅迫からも自由でな
ければなりません。私たちは歴史研究の自由を守ります。そして、すべての
国の政府がそれを尊重するよう呼びかけます。
多くの国にとって、過去の不正義を認めるのは、未だに難しいことです。第
二次世界大戦中に抑留されたアメリカの日系人に対して、アメリカ合衆国政
府が賠償を実行するまでに四〇年以上がかかりました。アフリカ系アメリカ
人への平等が奴隷制廃止によって約束されたにもかかわらず、それが実際の
法律に反映されるまでには、さらに一世紀を待たねばなりませんでした。人
種差別の問題は今もアメリカ社会に深く巣くっています。米国、ヨーロッパ
諸国、日本を含めた、十九・二〇世紀の帝国列強の中で、帝国にまつわる人
種差別、植民地主義と戦争、そしてそれらが世界中の無数の市民に与えた苦
しみに対して、十分に取り組んだといえる国は、まだどこにもありません。
今日の日本は、最も弱い立場の人を含め、あらゆる個人の命と権利を価値あ
るものとして認めています。今の日本政府にとって、海外であれ国内であれ、
第二次世界大戦中の「慰安所」のように、制度として女性を搾取するような
ことは、許容されるはずがないでしょう。その当時においてさえ、政府の役
人の中には、倫理的な理由からこれに抗議した人がいたことも事実です。し
かし、戦時体制のもとにあって、個人は国のために絶対的な犠牲を捧げるこ
とが要求され、他のアジア諸国民のみならず日本人自身も多大な苦しみを被
りました。だれも二度とそのような状況を経験するべきではありません。
今年は、日本政府が言葉と行動において、過去の植民地支配と戦時における
侵略の問題に立ち向かい、その指導力を見せる絶好の機会です。四月のアメ
リカ議会演説において、安倍首相は、人権という普遍的価値、人間の安全保
障の重要性、そして他国に与えた苦しみを直視する必要性について話しまし
た。私たちはこうした気持ちを賞賛し、その一つ一つに基づいて大胆に行動
することを首相に期待してやみません。
過去の過ちを認めるプロセスは民主主義社会を強化し、国と国のあいだの協
力関係を養います。「慰安婦」問題の中核には女性の権利と尊厳があり、そ
の解決は日本、東アジア、そして世界における男女同権に向けた歴史的な一
歩となることでしょう。
私たちの教室では、日本、韓国、中国他の国からの学生が、この難しい問題
について、互いに敬意を払いながら誠実に話し合っています。彼らの世代は、
私たちが残す過去の記録と歩むほかないよう運命づけられています。性暴力
と人身売買のない世界を彼らが築き上げるために、そしてアジアにおける平
和と友好を進めるために、過去の過ちについて可能な限り全体的で、でき得
る限り偏見なき清算を、この時代の成果として共に残そうではありませんか。
署名者一覧(名字アルファベット順)
ダニエル・オードリッジ(パデュー大学教授)
ジェフリー ・アレクサンダー(ウィスコンシン大学パークサイド校准教授)
アン・アリソン(デューク大学教授)
マーニー・アンダーソン (スミス大学准教授)
E・テイラー・アトキンズ(北イリノイ大学教授 )
ポール・バークレー(ラファエット大学准教授)
ジャン・バーズレイ(ノースカロライナ大学チャペルヒル校准教授)
ジェームズ•R・バーソロミュー (オハイオ州立大学教授)
ブレット・ド・バリー(コーネル大学教授)
マイケル・バスケット(カンザス大学准教授)
アラン・バウムラー(ペンシルバニア・インディアナ大学教授)
アレキサンダー・ベイ(チャップマン大学准教授)
テオドル・ベスター(ハーバード大学教授)
ビクトリア・ベスター(北米日本研究資料調整協議会専務理事)
ダビンダー・ボーミック(ワシントン大学准教授)
ハーバート・ビックス(ニューヨーク州立大学ビンガムトン校名誉教授)
ダニエル・ボツマン(イェール大学教授)
マイケル・ボーダッシュ(シカゴ大学教授)
トマス・バークマン(ニューヨーク州立大学バッファロー校名誉教授)
スーザン・L・バーンズ(シカゴ大学准教授)
エリック・カズディン(トロント大学教授)
パークス・コブル(ネブラスカ大学リンカーン校教授)
ハルコ・タヤ・クック(ウイリアム・パターソン大学講師)
セオドア・クック(ウイリアム・パターソン大学教授)
ブルース・カミングス(シカゴ大学教授)
カタルジナ・シュエルトカ(ライデン大学教授)
チャロ・ディエチェベリー(ウィスコンシン大学マディソン校准教授)
エリック・ディンモア(ハンプデン・シドニー大学准教授)
ルシア・ドルセ(ロンドン大学准教授)
ロナルド・P・ドーア(ロンドン・スクール・オブ・エコノミックス名誉フ
ェロー)
ジョン・W・ダワー(マサチューセッツ工科大学名誉教授)
マーク・ドリスコル(ノースカロライナ大学チャペルヒル校教授)
プラセンジット・ドアラ(シンガポール国立大学教授)
アレクシス・ダデン(コネチカット大学教授)
マーティン・デューゼンベリ(チューリッヒ大学教授)
ピーター・ドウス(スタンフォード大学名誉教授)
スティーブ・エリクソン(ダートマス大学准教授)
エリサ・フェイソン(オクラホマ大学准教授)
ノーマ・フィールド(シカゴ大学名誉教授)
マイルズ・フレッチャー(ノースカロライナ大学チャペルヒル校教授)
ペトリス・フラワーズ(ハワイ大学准教授)
ジョシュア・A・フォーゲル(ヨーク大学教授)
セーラ・フレドリック(ボストン大学准教授)
デニス・フロスト(カラマズー大学准教授)
サビーネ・フリューシュトゥック(カリフォルニア大学サンタバーバラ校教
授)
ジェームス・フジイ(カリフォルニア大学アーバイン校准教授)
タカシ・フジタニ(トロント大学教授)
シェルドン ・M・ ガ ロン(プリンストン大学教授)
ティモシー・S・ジョージ(ロードアイランド大学教授)
クリストファー・ガータイス(ロンドン大学准教授)
キャロル・グラック(コロンビア大学教授)
アンドルー・ゴードン(ハーバード大学教授)
ヘレン・ハーデーカー(ハーバード大学教授)
ハリー・ハルトゥニアン(ニューヨーク大学名誉教授)
長谷川毅(カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授)
橋本明子(ピッツバーグ大学教授)
サリー・ヘイスティングズ(パデュー大学准教授)
トム・ヘイブンズ(ノースイースタン大学教授)
早尾健二(ボストンカレッジ准教授)
ローラ・ハイン(ノースウェスタン大学教授)
ロバート・ヘリヤー(ウェイクフォレスト大学准教授)
マンフレッド・ヘニングソン(ハワイ大学マノア校教授)
クリストファー・ヒル(ミシガン大学助教授)
平野克弥(カリフォルニア大学ロサンゼルス校准教授)
デビッド・ハウエル(ハーバード大学教授)
ダグラス・ハウランド(ウィスコンシン大学ミルウォーキー校教授)
ジェムス・ハフマン(ウイッテンバーグ大学名誉教授)
ジャネット・ハンター(ロンドン・スクール・オブ・エコノミックス教授)
入江昭(ハーバード大学名誉教授)
レベッカ・ジェニスン(京都精華大学教授)
ウィリアム・ジョンストン(ウェズリアン大学教授)
ジャン・ユンカーマン(ドキュメンタリー映画監督)
イクミ・カミニシ(タフツ大学准教授)
ケン・カワシマ(トロント大学准教授)
ウィリアム・W・ケリー(イェール大学教授)
ジェームス・ケテラー(シカゴ大学教授)
ケラー・キンブロー(コロラド大学ボルダー校准教授)
ミリアム・キングスバーグ(コロラド大学助教授)
ジェフ・キングストン(テンプル大学ジャパン教授)
ヴィキター・コシュマン(コーネル大学教授)
エミ・コヤマ(独立研究者)
エリス・クラウス(カリフォルニア大学サンディエゴ校名誉教授)
ヨーゼフ・クライナー(ボン大学名誉教授)
栗山茂久(ハーバード大学教授)
ピーター・カズニック(アメリカン大学教授)
トーマス・ラマール(マギル大学教授)
アンドルー・レビディス(ハーバード大学研究員)
イルセ・レンツ(ルール大学ボーフム名誉教授)
マーク・リンシカム(ホーリークロス大学准教授)
セップ・リンハルト(ウィーン大学名誉教授)
ユキオ・リピット(ハーバード大学教授)
アンガス・ロッキャー(ロンドン大学准教授)
スーザン・オルペット・ロング(ジョンキャロル大学教授)
ディビッド・ルーリー(コロンビア大学准教授)
ヴェラ・マッキー(ウーロンゴン大学教授)
ウォルフラム・マンツェンライター(ウィーン大学教授)
ウィリアム・マロッティ(カリフォルニア大学ロサンゼルス校准教授)
松阪慶久(ウェルズリー大学教授)
トレント・マクシー(アマースト大学准教授)
ジェームス・L・マクレーン(ブラウン大学教授)
ガビン・マコーマック(オーストラリア国立大学名誉教授)
メリッサ・マコーミック(ハーバード大学教授)
デイビッド・マクニール(上智大学講師、ジャーナリスト)
マーク・メッツラー(テキサス大学オースティン校教授)
イアン・J・ミラー(ハーバード大学教授)
ローラ・ミラー(ミズーリ大学セントルイス校教授)
ジャニス・ミムラ(ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校准教授)
リチャード・マイニア(マサチューセッツ州立大学名誉教授)
中村美理(ウェズリアン大学准教授)
ユキ・ミヤモト(デポール大学准教授)
バーバラ・モロニー(サンタクララ大学教授)
文有美(スタンフォード大学准教授)
アーロン・ムーア(マンチェスター大学准教授)
テッサ・モーリス=スズキ(オーストラリア国立大学教授)
オーレリア・ジョージ・マルガン(ニューサウスウェールズ大学教授)
リチャード・タガート・マーフィー(筑波大学教授)
テツオ・ナジタ(シカゴ大学名誉教授)
ジョン・ネイスン(カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授)
クリストファー・ネルソン(ノースカロライナ大学チャペルヒル校准教授)
サトコ・オカ・ノリマツ(『アジア太平洋ジャーナル:ジャパンフォーカス』
エディター)
マーク・ノーネス(ミシガン大学教授)
デビッド·桃原·オバミラー(グスタフ・アドルフ大学准教授)
尾竹永子(ウエズリアン大学特別講師、アーティスト)
サイモン・パートナー(デューク大学教授)
T・J・ペンペル(カリフォルニア大学バークレー校教授)
マシュー・ペニー(コンコルディア大学准教授)
サミュエル・ペリー(ブラウン大学准教授)
キャサリン・ フィップス(メンフィス大学准教授)
レスリー・ピンカス(ミシガン大学准教授)
モーガン・ピテルカ(ノースカロライナ大学チャペルヒル校准教授)
ジャネット・プール(トロント大学准教授)
ロジャー・パルバース(作家・翻訳家)
スティーブ・ラブソン(ブラウン大学名誉教授)
ファビオ・ランベッリ(カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授)
マーク・ラビナ(エモリー大学教授)
シュテフィ・リヒター(ライプチヒ大学教授)
ルーク・ロバーツ(カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授)
ジェニファー・ロバートソン(ミシガン大学教授)
ジェイ・ルービン(ハーバード大学名誉教授)
ケネス・ルオフ(ポートランド州立大学教授)
ジョルダン・サンド(ジョージタウン大学教授)
ウエスリー・佐々木・植村(ユタ州立大学准教授)
エレン・シャッツナイダー(ブランダイス大学准教授)
アンドレ・シュミット(トロント大学准教授)
アマンダ・C・シーマン(マサチューセッツ州立大学アマースト校准教授)
イーサン・セーガル(ミシガン州立大学准教授)
ブォルフガング·ザイフェルト(ハイデルベルク大学名誉教授)
マーク・セルデン(コーネル大学上級研究員)
フランツイスカ・セラフイン(ボストンカレッジ准教授)
さゆり・ガスリー・清水(ライス大学教授)
英子・丸子・シナワ(ウィリアムス大学准教授)
パトリシア・スイッペル(東洋英和女学院大学教授)
リチャード・スミスハースト(ピッツバーグ大学名誉教授)
ケリー・スミス(ブラウン大学准教授)
ダニエル・スナイダー(スタンフォード大学アジア太平洋研究センター副所
長)
M・ウイリアム・スティール(国際基督教大学教授)
ブリギッテ・シテーガ(ケンブリッジ大学准教授)
ステファン・タナカ(カリフォルニア大学サンディエゴ校教授)
アラン・タンスマン(カリフォルニア大学バークレー校教授)
セーラ・タール(ウィスコンシン大学マディソン校准教授)
マイケル・ティース(カリフォルニア大学ロサンゼルス校准教授)
マーク・ティルトン(パデュー大学准教授)
ジュリア・トマス(ノートルダム大学准教授)
ジョン・W・トリート(イェール大学名誉教授)
ヒトミ・トノムラ (ミシガン大学教授)
内田じゅん(スタンフォード大学准教授)
J・キース・ヴィンセント(ボストン大学准教授)
スティーブン・ブラストス(アイオワ大学教授)
エズラ・ヴォーゲル(ハーバード大学名誉教授)
クラウス・フォルマー(ミュンヘン大学教授)
アン・ウォルソール(カリフォルニア大学アーバイン校名誉教授)
マックス・ウォード(ミドルベリー大学助教授)
ローリー・ワット(ワシントン大学(セントルイス)準教授)
ジェニファー・ワイゼンフェルド(デューク大学教授)
マイケル・ワート(マルケット大学准教授)
カレン・ウイゲン(スタンフォード大学教授)
山口智美(モンタナ州立大学准教授)
山下サムエル秀雄(ポモナ大学教授)
ダーチン・ヤン(ジョージ・ワシントン大学准教授)
クリスティン•ヤノ(ハワイ州立大学マノア校教授)
マーシャ・ヨネモト(コロラド大学ボルダー校准教授)
米山リサ(トロント大学教授)
セオドア・ジュン・ユウ(ハワイ大学准教授)
吉田俊(西ミシガン大学教授)
ルイーズ・ヤング(ウィスコンシン大学マディソン校教授)
イヴ・ジマーマン(ウェルズリー大学准教授)
ラインハルト・ツェルナー(ボン大学教授)

この声明は、二〇一五年三月、シカゴで開催されたアジア研究協会(AAS)
定期年次大会のなかの公開フォーラムと、その後にメール会議の形で行われ
た日本研究者コミュニティ内の広範な議論によって生まれたものです。ここ
に表明されている意見は、いかなる組織や機関を代表したものではなく、署
名した個々の研究者の総意にすぎません。

クリックしてjapan-scholars-statement-2015.5.4-jpn_0.pdfにアクセス

[下訳] ダデン 日韓国交正常化50周年レセプション(187人声明) —

[下訳] ダデン 日韓国交正常化50周年レセプション(187人声明)

“安倍、法理の後に隠れて慰安婦問題歪曲…法的・道徳的責任を負わなければ”
韓日修交50周年レセプション

さらにでも米コネチカット大教授

韓日50年学術会議で一針

“日本は法理の後に隠れて誤った論理ならべる仕事を辞めなければなりません。 安倍総理が話すその人身売買を誰が犯しましたか。 すぐに日本です。”

アレクシスさらにでも(46)米コネチカット大教授が22日ソウル、西大門区(ソデムング)、東北アジア歴史財団大会議室で開かれた‘韓日協定50年史の再照明国際学術会議’で日本軍慰安婦問題に対して日本政府が責任ある姿勢を取ることを促した。 さらにでも教授は2月日本安倍総理の歴史教科書歪曲試みに反発して日本政府の歴史観を批判する知識人共同声明を主導し、世界歴史学者の参加を促している。 彼が主導する共同声明に参加した学者は500人余り規模だ。
さらにでも教授はこの日‘日本の植民の責任、そして歴史と国際法での慰安婦’を主題で提案に出て“1965年韓日国交正常化を通じて韓国に提供されたお金は日本軍に強制動員された性的奴隷犯罪に対する賠償金でないことと理解する”として“被害者に対する義務が終わったと主張する日本政府が被害者の視線を直視することを願って法理の後に隠れて粘り強くて頑固に誤った論理だけをならべて生存被害者が訴訟を行うことを防ぐための時間稼ぎ行為を中断しなければならない”と主張した。

彼は安倍総理が使う‘人身売買’表現の問題点も指摘した。 さらにでも教授は“最近いくつかの月間安倍晋三日本総理は‘人身売買’用語を3度でも使ったが、その時ごとに誰が人身売買犯したのかに対する質問に答えることができなかった”として“答は簡単だが、日本がした”と言い切った。

引き続き“安倍総理下の日本は日本軍の慰安婦統制を否認する雰囲気を公開的に作っていて、ここに便乗して‘民間業者による行為’を前に出すなど偽りなった主張を揺れている”として“これは研究を通じて既に永くて前偽りで立証された”と指摘した。

さらにでも教授は何より日本が道徳的、法的責任を明確に認めて謝らなければなければならないと促した。 彼は“日本帝国全域に性的奴隷制度として慰安所が設置されたのを知っていた日本軍の法的道徳的責任は明らかだ”として“日本は日本軍性的奴隷被害者はもちろん今日全世界すべての被害者の人権のためにこの極悪非道な人権犯罪に対して法的な責任を負わなければならない”と話した。

世界知性社会が日本軍慰安婦問題解決の有無に注目するという展望も続いた。 さらにでも教授は“学者と活動家が現在の直面した問題を悟ることがいつの時よりも重要な時点”としながら“葛藤を生じさせる歴史関係と和解問題がどちらか一つの国家だけの問題だったことはない”と見通した。

一方この日会議ではイ・ジニ、イースタンイリノイ大教授が“関東(クァンドン)大虐殺当時日本で殺害されたカン大興(テフン)(当時24才)さんの墓が日本と韓国にそれぞれ用意されたし埼玉県住民たちが彼の追悼式を上げた”と明らかにすることもした。 遺族はこの事実を知れないまま彼が失踪したと考えてきた。

https://web.archive.org/web/20150626230452/http://www.hankookilbo.com/v/8ad663d7dbd440259be007cf02b5f045

http://megalodon.jp/2015-0627-0804-49/www.hankookilbo.com/v/8ad663d7dbd440259be007cf02b5f045
“아베, 법리 뒤에 숨어 위안부 문제 왜곡… 법적ㆍ도덕적 책임 져야”

한일 수교 50주년 리셉션

더든 美 코네티컷대 교수

한일 50년 학술회의서 일침

“일본은 법리 뒤에 숨어 잘못된 논리 늘어놓는 일을 그만둬야 합니다. 아베 총리가 말하는 그 인신매매를 누가 저질렀습니까. 바로 일본입니다.”

알렉시스 더든(46) 미 코네티컷대 교수가 22일 서울 서대문구 동북아역사재단 대회의실에서 열린 ‘한일협정 50년사의 재조명 국제학술회의’에서 일본군 위안부 문제에 대해 일본 정부가 책임 있는 자세를 취할 것을 촉구했다. 더든 교수는 2월 일본 아베 총리의 역사교과서 왜곡 시도에 반발해 일본 정부의 역사관을 비판하는 지식인 공동 성명을 주도하고, 세계 역사학자들의 참여를 독려하고 있다. 그가 주도하는 공동성명에 동참한 학자는 500여명 규모다.
더든 교수는 이날 ‘일본의 식민책임, 그리고 역사와 국제법에서의 위안부’를 주제로 발제에 나서 “1965년 한일국교정상화를 통해 한국에게 제공된 돈은 일본군에 강제 동원된 성노예 범죄에 대한 배상금이 아닌 것으로 안다”며 “피해자에 대한 의무가 끝났다고 주장하는 일본 정부가 피해자의 시선을 직시하기를 바라며 법리 뒤에 숨어 끈질기고 완고하게 잘못된 논리만을 늘어놓으면서 생존피해자가 소송을 벌이는 것을 막기 위한 시간벌기 행위를 중단해야 한다”고 주장했다.

그는 아베 총리가 사용하는 ‘인신매매’ 표현의 문제점도 지적했다. 더든 교수는 “최근 몇 달 간 아베 신조 일본 총리는 ‘인신매매’ 용어를 세 번이나 썼지만, 그때마다 누가 인신매매 저질렀는지에 대한 질문에 답하지 못했다”며 “답은 간단한데, 일본이 했다”고 잘라 말했다.

이어 “아베 총리 하의 일본은 일본군의 위안부 통제를 부인하는 분위기를 공개적으로 만들고 있으며, 여기 편승해 ‘민간 업자에 의한 행위’를 내세우는 등 거짓된 주장을 들먹이고 있다”며 “이는 연구를 통해 이미 오래 전 거짓으로 입증됐다”고 지적했다.

더든 교수는 무엇보다 일본이 도덕적, 법적 책임을 분명히 인정하고 사과해야 한다고 촉구했다. 그는 “일본 제국 전역에 성노예 제도로서 위안소가 설치된 것을 알고 있었던 일본군의 법적 도덕적 책임은 분명하다”며 “일본은 일본군 성노예 피해자는 물론 오늘날 전세계 모든 피해자의 인권을 위해 이 극악무도한 인권 범죄에 대해 법적인 책임을 져야 한다”고 말했다.

세계 지성사회가 일본군 위안부 문제 해결 여부에 주목할 것이라는 전망도 이어졌다. 더든 교수는 “학자와 활동가들이 현재 직면한 문제를 깨닫는 것이 어느 때보다도 중요한 시점”이라며 “갈등을 빚는 역사관계와 화해 문제가 어느 한 국가만의 문제였던 적은 없다”고 내다봤다.

한편 이날 회의에서는 이진희 이스턴일리노이대 교수가 “관동대학살 당시 일본에서 피살당한 강대흥(당시 24세)씨의 묘가 일본과 한국에 각각 마련됐고 사이타마현 주민들이 그의 추모식을 올려왔다”고 밝히기도 했다. 유족은 이 사실을 알지 못한 채 그가 실종된 것으로 생각해왔다.

江川紹子 「友人たちからの心のこもった忠告」(187人声明) —

江川紹子 「友人たちからの心のこもった忠告」(187人声明)

歴史認識で知日派研究者187人が声明 安倍首相は忠告を受け入れられるか?

米国を中心とした日本研究者、歴史学者ら187人が連名で、日本側の歴史認識を憂慮する「日本の歴史家を支持する声明」(*)と題する文書が公表された。
署名者の中には、『ジャパン・アズ・ナンバー1』で知られる社会学者のエズラ・ヴォーゲル(ハーバード大名誉教授)、日本近代史が専門で『敗北を抱きしめて』などを書いたジョン・ダワー(マサチューセッツ工科大学名誉教授)、日本の経済や社会構造を専門に研究しているイギリスの社会学者ロナルド・ドーア(ロンドン大名誉教授)ら、著名な知日派学者も含まれている。
知日派からの愛ある忠告

書面は「戦後日本が守ってきた民主主義、自衛隊への文民統制、警察犬の節度ある運用と、政治的な寛容さ」「科学に貢献し他国に寛大な援助を行ってきた」点を称賛したうえで、歴史認識、とりわけ慰安婦問題について、昨今の日本から発せられる主張に強い懸念を示している。
慰安婦制度については、(1)その規模の大きさ、(2)軍による組織的な監理が行われた点、(3)植民地と占領地から貧しく弱い立場の女性を搾取した――という点で、戦時における性的暴力と軍隊にまつわる売春の中でも、「特筆すべきもの」と指摘。「強制連行はなかった」という点を強調し、あたかも朝鮮半島で女性たちが自発的に慰安婦になったかのような主張に対しては、「大勢の女性が自己の意思に反して拘束され、恐ろしい暴力にさらされたことは、すでに資料と証言が明らかにしている」として、被害者が受けた残忍な行為から目を背けないよう、たしなめている。
この文書が重い意味を持つのは、いわゆる「反日」的な人たちからではなく、日本に好意を持ち、日本をよく知る専門家から出されているからだ。書面の冒頭には、「私たちの多くにとって、日本は研究の対象であるのみならず、第二の故郷でもあります」と、“日本愛”が吐露されている。アメリカで奴隷制度を廃止した後も今なお人種差別が残っていることや、欧米を含めた人種差別や植民地支配についても言及されていて、決して「上から目線」で日本を非難している内容ではない。
しかも、慰安婦問題をめぐっては、「日本だけでなく、韓国と中国の民族主義的な暴言によっても、あまりにもゆがめられてきました」として、日本だけに問題があるわけではないことも、明記している。この声明は英語と日本語で発せられているが、できれば韓国語と中国語のヴァージョンも発表してもらいたいと思う。
現政権による出版社や記者への圧力

書面全体から強く伝わってくるのは、日本に対する「批判」より、「懸念」「心配」「落胆」と、それでも捨てきれない「好意」「願望」「期待」だ。
こうした知日派の意見が今の時期に発せられたのは、過去の日本の「侵略」を認める発言を避け続ける安倍晋三首相の歴史認識への懸念や、この夏に出される戦後70年の首相談話への関心が高まっていることに加え、日本政府の歴史認識に関する対外発信のやり方に対する違和感が強まっているからだろう。
例えば、日本の外務省は昨年11月、米国の高校向けの教科書に慰安婦についての誤った記載があるとして、出版社に訂正を求めた。米国では、日本の教科書検定制度のように国が教科書に関与する制度はないため、この訂正要求は「国家による出版に対する圧力」と受け止められた。今年に入ってから、ウォールストリート・ジャーナルなどの有力紙が、日本政府に批判的にこの問題を報じている。3月には、米歴史学者らが日本政府を批判する声明を発している。

この問題については、その後、日本の歴史学者らが、誤った記載を指摘し訂正を求める要求を出版社に行っている。このように、間違いがあれば、学者同士の議論の中で正されるのが望ましい。いきなり政府が要求を突きつけたことは、出版や学問の場に権力がずかずかと踏み込んでくる印象を強く与えたに違いない。
こうしたやり方は、米国においては逆効果であり国益に反する結果を招くと駐米外交官がわからないはずはないだろう。それでも抗えないほど首相官邸の指示が強力なのか。それとも日本の外交官の主体的判断力が著しく低下しているのか。あるいは、その両方なのか……。
現政権は、欧米のメディアに対しても積極的に“意見表明”を行っているようだ。
4月には、日本に滞在する海外メディアの特派員らで作る日本海外特派員協会の機関誌に、5年間の東京勤務を終えて帰国する独フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイツゥング紙のカーステン・ゲルミス氏が寄せた手記が話題になった。ゲルミス氏も、「私のこの国への愛情は募るばかりだ」と述べたうえで、日本の政府が海外メディアに対して閉鎖的になっている一方で、批判的な報道に対して高圧的な対応をとるとして、次のような経験を書いている。
「私が安倍政権の歴史修正主義に批判的に書いた記事が掲載されると、フランクフルトの日本総領事が、新聞本紙の外交担当のデスクを訪ねてきて、『東京』からの異議を伝えた。中国がこの記事を反日プロパガンダに利用していると抗議したのだ。
冷え切った90分間の会談の終わりに、デスクは記事が間違えているという事実を証明する情報を総領事に求めたが、それは無駄に終わった。『金が絡んでいると疑わざるを得ない』と外交官は言った。それは、私を、デスクを、そして新聞社全体を侮辱することにほかならない。そして、私の記事の切り抜きのフォルダーを引き出しながら、『中国のプロパガンダ記事を書く必要があるとは、ご愁傷様ですな』と続けた。私がビザ申請の承認を得るためにその記事を書く必要があったらしいと考えているようだった。
私が? 北京の雇われスパイだって? そこに行ったこともなければ、ビザの申請をしたこともないというのに」(編註:日本語版原文ママ)
このような対応で、記者や新聞社の論調を変えることができると政府が考えているとしたら、愚かなことだ。
安倍首相は忠告に耳を傾けるか

しかし安倍首相自身は、このような手法によるマイナス面には、まったく目を向けないようである。1月29日の衆院予算委員会で、先の米国の教科書の問題について問われると、「主張すべき点をしっかりと主張してこなかった結果、このような教科書が米国で使われている」と述べ、「国際社会においては、決してつつましくしていることによって評価されることはないわけでありまして、主張すべき点はしっかりと主張していく」と意気軒昂だ。
ところで、米国の大学やシンクタンクでは、中国に対する関心が高まる一方で、日本研究の衰退が著しいという。これが米政権にも影響を与えているのではないかという危機感から、安倍首相は今回の訪米で、ハーバード大、マサチューセッツ工科大、スタンフォード大と相次いで大学を訪問して講演を行った。さらに日本研究への支援のため、マサチューセッツ工科大とコロンビア大、ジョージタウン大に対して、政府予算から約16億円を拠出することを明らかにした。
日米政府だけでなく、国民同士の理解を深めるためにも、日本をよく知る専門家は大切な存在だ。知日派の研究者を増やしていく努力は必要だろう。ただ、そうであればなおのこと、日本の最もよい理解者である人たちの忠告には、真摯に耳を傾ける必要があるのではないか。

今回、知日派研究者らが出した書面は、安倍首相の体面にも、十分に配慮している。安倍首相が米国議会での演説の中で、「人権」や「アジア諸国民に苦しみを与えた事実」に触れたことを高く評価。「過去の植民地支配と戦時における侵略の問題に立ち向かい、その指導力を見せる」ことへの期待が述べられている。
書面は発表前に、首相官邸にも届けられた、とのことだ。友人たちからの心のこもった忠告は、安倍首相の心に届くのだろうか……。
(文=江川紹子/ジャーナリスト)

Business Journal 2015.05.13

https://web.archive.org/web/20150628223210/http://biz-journal.jp/2015/05/post_9905.html

https://web.archive.org/web/20150628223619/http://biz-journal.jp/2015/05/post_9905_2.html

https://web.archive.org/web/20150628224205/http://biz-journal.jp/2015/05/post_9905_3.html

ジョルダン・サンド 「朝鮮人兵士(遺族)に補償してない」 —

ジョルダン・サンド 「朝鮮人兵士(遺族)に補償してない」

「『米国知日派学者』ということで、私たちの発言も ある権威とステータスを与えられていることも事実である」

「約五万人の台湾人・朝鮮人兵士の霊が祀られているが、彼らは『日本人ではない』ということで、政府はその遺族に補償を行っていない」


アメリカよりみた「靖国問題」-ドーク氏に反論する

ジョルダン・サンド

米国・ジョージタウン大学准教授(日本近代史)

<著者よりのメール>
はじめまして。私は米国ジョージタウン大学で日本歴史を教えているジョルダン・サンドというものです。2006年、ジョージタウン大学の同僚であるケビン・ドーク氏が『サンケイ新聞』や『諸君』などの日本のメディアで、首相の靖国参拝を支持する発言をして、安倍晋三首相の『美しい国へ』(文春新書)にも引用され、注目を受けました。それに対する反論を書いてみたものです。ドーク氏の議論は複数のサイトで引用されているので、「ケビン・ドーク」を検索するとすぐ出ます。同じ検索で、私の反論も上がってくるようにできたらよいと思っています。研究論文ではなくて、ただの常識論に過ぎませんが、ドーク氏の議論が多少の話題性を持ったので、反論する意味もそれなりにあると思っています。私として一番望んでいるのは、ドーク氏の議論を読んだ、あるいは間接的に知った人々がこの反論も読んでくれることです。今のところドーク氏は英語では靖国問題について何も発表していませんので、私もとりあえず、日本語のみで反論したいと考えています。加藤さんのサイト「ネチズンカレッジ」に載せていただけらばありがたいですが、学術論文ではありませんので、ふさわしいかどうかわかりません。もちろん「転載自由」にして利用できる人がいれば利用してもらいたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

Jordan Sand
Associate Professor of Japanese History and Culture
Georgetown University
二〇〇六年の五月に、私が所属しているジョージタウン大学東アジ ア文化言語学部の学部長を務めるケビン・ドーク氏は、首相の靖国参拝を肯定する論説を三回に渡って産経新聞に連載した。この論説は注目され、その後も彼は 『諸君』など諸雑誌にも発言している。これは米国の日本研究者の間では少数派の意見であり、その意味で、ドーク氏の勇気には敬意を表したい。しかし、日本 国内には、彼の立場に共感する人はより多いようだ。たとえば、その著書『美しい国へ』のなかで、安倍首相(当時官房長官)は首相の靖国参拝を擁護する根拠 のひとつとしてドーク氏の論説を引用している。人文系の日本研究者が首相候補に引用される幸運に恵まれるのはめったにないことだろう。
引用されているのは、ワシントンのアーリントン国立墓地に は奴隷制のために戦った南軍の将兵も埋葬されているが、歴代大統領が参拝するからといってそれが奴隷制に賛成しているという意味はない、同様に首相の靖 国参拝も東条英機ら戦犯の行為に対する賛成の表明になるわけではないというドーク氏の主張だ。だが、靖国に祀られている戦犯は内戦で戦ったのではない。し かも「日本軍」(官軍、皇軍)を相手に戦った国内外の兵士は靖国に一人も祀られていないのだから、ドーク氏の例えは正確ではない。[注1] 彼が主張しているすべての戦没者に対する尊重と弔意表明 の必要性という点は評価すべきものかもしれない。ただ、このような尊重は加害者の側が一方的に要求するだけでは決して実現することはない。アジア太平洋戦 争中に日本が侵略した国々の被害者が許す理由が十分にあると納得してはじめて、すべての日本兵を許し、すべての戦没者を同等に悼むことが可能になるのだ。

[注1] 厳密に言えば、「英霊」として日本兵と一 緒に祭られていないが、神社境内に祭礼施設はある。1965年に「鎮霊社」という小さな社が「世界各国す べての戦死者や戦争で亡くなられた方々の霊」のために靖国神社のなかに建立された。半分隠れた場所にあり、鉄柵に囲まれているので、礼拝は通常不可能だ。
これ以外にドーク氏が述べている議論は、大筋として産経新 聞や『諸君』によく見られる議論だ。たとえば、「政府や国民が」戦争で死んだ先人を弔うのは「自然」だという主張。首相の参拝についても、小泉総理本人は 政治的意図はないと言っているのだから、民主主義社会の自由の基本である「他者の尊厳への精神的敬意」に基づいた個人の表現とみなすべきだという主張。こ れを中国やアメリカなどの「外部から」批判するのは「人間の心を排除」する不当な態度だ、といった内容だ。

ただ、この議論のなかにひとつ、今まで注目されなかった興 味深い事例が加えられている。これは1932年に靖国参拝を命じられ、自分の信仰に反するという理由で参拝を拒否した上智大学のカトリック信徒の学生の話だ。これに対し、日本 政府は靖国参拝は「愛国心と忠誠を表すだけで、宗教的慣行でない」と、学生の参拝拒否を許さなかった。ローマ教皇庁にもこの事件が伝えられ、後に教皇庁は 日本政府を支持した。ドーク氏はこの事例から、「その結果、日本カトリック教徒は自由に靖国を参拝するようになった」(赤字、筆者)という驚 くべき結論を引き出している。問題はこれらの学生は参拝する自由を求めていたのではなく、参拝を強制されることに抵抗したということだ。ドーク氏はこの事 実を無視して、ローマ教皇庁は日本国民の「独自の価値観」を尊重したと結論付けている。この解釈では日本人カトリック信徒に参拝を強要した国家の行為(ま た事件に関して中立を守ることにしたローマ教皇庁の姿勢)と、自分の意志に基づいて祈る日本人の権利とが混同されている。日本政府と日本国民は同一のもの とされ、国家の強制力とカトリック教会のヒエラルキーの板ばさみになったカトリック教徒の個人的良心の余地は残されていない。[注2]

[注2] ちなみに、日本カトリック中央協議会は2007 年2月に公表した「信教の自由」に関する声明文のなかで1932年の事件を取り上げ、学生の参拝反対を支持しなかった当時の日本カトリック教会はみずから の「存亡を左右しかねない問題を突きつけられ」ていたと解釈し、靖国参拝を「習俗的行為」として宗教の問題ではないと主張する現在の憲法案や意見を戦中に 逆戻りさせる「危険をはらむ」ものとして批判している。http://www.cbcj.catholic.jp/jpn/doc/cbcj/070223.htm#11
いわゆる自由主義史観の魅力は、「自由」と名付けたところ にあるように思われる。罪悪感を永久に担ぎ続けたくないとはだれもが思うことだろう。自国に対してポジティブな感情を持ちたいとも思うだろう。日本国民も 個人として国を誇る気持ちを表現し、国のために死んだ人を悼む自由があるのではないか、あるに違いない。しかし、この「自由」が意味を持つためには、靖国 参拝(あるいは合祀)、国歌斉唱などの国家的儀礼に参加を強制されない自由をも社会が保障しなければならない。そして、個人本位の自由主義に立つなら、国 家の行為によって被害を受けた個人は国籍を問わずその国家に賠償を要求する権利を持つともいえるはずだ。国家戦略の下で行われた加害行為に対する国家の責 任は無限ではないが、多大である。なぜなら、国家のような組織なしには植民地支配も侵略戦争もありえないからだ。

一方、首相が靖国神社に参拝するべきかどうかという問題は 個人の権利あるいは自由の問題ではない。個人が参拝するのを止めろと要求している外国政府は一つもない。だから、首相も参拝する「権利」はある。ただし、 政府の要人であるからには、当然ニュースになるし、外交的な挑発として受け止められる可能性もある。ドーク氏も指摘するように、公人としてであれ私人とし てであれ、問題の質はさほど変わらない。しかし、肝心なのはむしろ、参拝する行為の政治性と予想される外交上の影響を知りながら日本の政治家が行き続ける ということだ。いくら「日本国民が決めるべき内面的な案件だ」と主張しても、首相は参拝によってアジアの近隣諸国に対し、意識的にある態度を表明すること になる。そして、国家間の条約は締結されているものの、植民地化と侵略戦争による個人的被害に対して日本政府は何の賠償もしていないし、しかもその被害自 体を少なからぬ日本の政治家は今も認めていないという状況を背景に、侵略された諸国の多くの人々は靖国参拝という象徴的意思表明に対して怒ってるのだ。す なわち、アジア太平洋戦争が政治的問題として残っている限り、靖国問題の中核は日本的弔慰の伝統や、参拝における公私の定義や、靖国参拝は宗教行動かどう かのニュアンスにまつわるのではなく、日本政府はどうやってアジア諸国の人々も受け入れることができる過去の解釈に到達できるかにあるのだ。

中国政府が被害の記憶を悪用して国民の間にナショナリズム 感情を扇動しているということは事実であり、中国ナショナリズムは最近確かに醜い現れ方をしている。しかし、被害の記憶が悪用されているからといっても、 虐殺や残虐行為の事実がある限り、日本帝国がその責任を赦免されるわけではない。日本軍が犯した残虐行為の長いリストをここではつぶさに検討することはで きないが、すでにほかの研究者によって数多く記録されている。数字や命令責任については議論が続いているが、南京や中国大陸戦域全体、またマニラやシンガ ポールなど東南アジアの都市部で日本兵による非武装市民の大量殺戮を疑う歴史専門家は少ない。強制連行された労働者や捕虜数十万人が餓死、疲労で死んだの も否定されていない。その恐ろしさにおいてナチの実験に匹敵する731部隊の人体実験も、それを行った医師本 人による記録と証言が残されている。

日本帝国そのものはもはや存在しない、そして靖国神社に祀 られている将兵はもう故人になっている。かれらは「弁護できない」のでその行為を非難するのは不当だとドーク氏は書いている。つまり、歴史は裁けないと言 うことだ。この議論は歴史学の方法論に関する複雑な問題につながる。しかしながら、われわれは歴史学者として日常の教育実践のなかで、次世代に何を伝え、 何を忘却に任せ、また教えている歴史よりどんな教訓を導き出すかについて常に選択せざるを得ない。教科書、資料館、記念施設などを通じて、過去を判断する この作業に政府も関与しているのだ。われわれの判断は不完全かもしれないが、しかし愛国心を高揚する以外の歴史的評価をすべて保留するならば、他国のナ ショナリズムに対抗する自国ナショナリズムしか残されないことになってしまう。

しかも、元帝国軍の日本兵が現在の日本政府から恩給を受け てきたなどの事実からも明らかなように、戦後の国家は戦中の帝国と法的に、また制度的に連続している。その連続を精神的レベルで維持することこそが靖国神 社の存在理由なのだ。天皇のための犠牲として日本兵の死を特化し、美化し、また国民の過去についての神話的歴史を保存することによって、靖国神社は現在と 将来の国民を国のために死ぬよう動員する目的の施設に他ならない。[注3] 靖国神社はそもそも私的な追悼のために造られた施設では ないし、1945年 以降、日本の社会や日本人の世界観が大きく変わったにもかかわらず、そういう施設になったわけでもない。だから靖国問題に関する倫理的な立場を探るあらゆ る誠実な努力は、個人の追悼する権利と国内外の被害者に対する国家の責任とを弁別することから出発しなければならない。

[注3] 皮肉なことに、靖国神社が日本帝国の精神 の維持に努めている一方、現在の日本政府はかつての日本帝国の現実を認めることを拒んでいる。すなわち、皇軍の兵隊として天皇のために戦って死んだ、約五万人の台湾人・朝鮮人兵士の霊が祀られているが、彼らは「日本人ではない」ということで、政府はその遺族に補償を行っていないからだ。
安倍はなぜドーク氏の論説を引用することにしたのか。日本 のジャーナリストや学者が同じことを書いていたとしたら、安倍は同じようにわざわざ名前を出して引用しただろうか。米国の大学教授が書いたものだからドー ク氏の言葉に付加価値が付いていると言ってもいいだろう。「米国の大学教授」の意見がこのように利用されること自体に、安倍は靖国参拝を単なる個人的信仰 の表明としてではなく、政治的行為としてみなしていることが見て取れる。

日本の政治家や政治評論家は、自分の主張を正当化する超越 的権威として、アメリカの知識人の言葉をしばしば引用してきた。同じように、小沢一郎やその他の政治家が日本を「普通の国」に変えるために軍事化を主張す るときに、アメリカは暗黙の規範となっている。小林よしのりはその漫画『靖国論』のなかで靖国神社は米国のアーリントン墓地と同じ性格の施設であり、だか ら日本国民は参拝して当然だと主張する(同じ論法はドーク氏も間接的に示唆している)。これらの議論はいずれも、軍隊の派遣や戦争の記念のしかたにおいて アメリカ合州国がよい手本であるという前提に立っている。現在の世界における米軍の役割を考えると、これは疑わしい論法と言わざるを得ない。

ドーク氏の「靖国論」も、それに対する私の反論も、外部か らの個人的な意見に過ぎない。とすれば、われわれが日本のメディアに意見を表明することも国内問題に対する内政干渉になるのではないか。日本の国事に関し てこのように倫理を説く何の権威を持っているのか、と思われるかもしれない。しかし逆説的に、「外部」の「米国知日派学者」ということで、私たちの発言も ある権威とステータスを与えられていることも事実である。日本人が死者をどう弔うかについて、だれも口を挟むべきではないというドーク氏の意見には同感す る。しかも、アメリカ人として、われわれも自国軍隊の非人道行為を直視しなければならない。しかし同時に、日本の政治家が戦争の加害者を「英霊」として崇 めるときに、自分自身あるいは自分の家族が日本軍によって残虐行為を受けた個人的な記憶を持っているアジアの多くの人々が、それに対して怒っても不思議で はない。過去の戦争をどう記憶するかということはいまや世界的な問題だ。どの国民であれ、自国の戦没者を「英霊」扱いしながらその被害者を無視していて は、批判されても仕方がない。このことは広島、長崎やその他の日本の都市、朝鮮半島、東南アジア、などなどの米軍による爆撃を受けた(現に受けている)被 害者に対するアメリカの責任についても当然言える事である。その「英霊」のために何をするかよりはその被害者のために何をするかの方が国の道徳的正統性を 測るよりよい尺度となるのではないか。

http://megalodon.jp/2015-0629-0646-30/members.jcom.home.ne.jp/nokato/data12.html

http://www.webcitation.org/6ZdH93D9n

オランダ 常に提起する(2014) — 2015年6月28日

オランダ 常に提起する(2014)

オランダ外相「河野談話の継承、日本の意向支持する」
ハーグ=梅原季哉2014年10月4日

オランダのティマーマンス外相は3日、第2次世界大戦中に日本軍が占領した旧オランダ領東インド(現インドネシア)での慰安婦問題は、「強制売春そのものであることには何の疑いもない、というのが我々の立場だ」と発言し、慰安婦問題を巡る謝罪と反省を表明した河野談話について、見直しを求める日本国内での動きを牽制(けんせい)した。

ハーグの同国外務省で、日本メディアを対象にした記者会見で発言した。

ティマーマンス氏は、「河野談話は、この問題に関する両国間の対話の良い前提となってきた。我々は、日本政府が河野談話を継承する意向であることを完全に支持する」と表明。

1994年1月に、オランダ政府が公文書館で調査した結果をふまえて当時の外相が出した強制性についての報告書を根拠に「自発的な売春行為などではない」と断言した。「実際に経験したオランダ国民やその子孫にとっては、今なお痛みを伴うことであり、両国が高官級で接触する際には、常に提起されるということを理解してもらいたい」とも語り、終わった過去の歴史ではないことを強調した。….

朝日

http://megalodon.jp/2015-0628-1021-00/digital.asahi.com/articles/ASGB4365SGB4UHBI00G.html?_requesturl=articles/ASGB4365SGB4UHBI00G.html&iref=comkiji_txt_end_s_kjid_ASGB4365SGB4U