韓国大統領選

「慰安婦合意は失敗」安候補、再交渉主張

毎日新聞2017年4月23日 18時45分(最終更新 4月23日 22時57分)
【ソウル大貫智子】韓国の朴槿恵(パク・クネ)前大統領の罷免により5月9日に行われる大統領選に立候補している第2野党「国民の党」の安哲秀(アン・チョルス)氏(55)が22日、毎日新聞の書面インタビューに応じ、2015年の日韓両政府による慰安婦合意について「どちらか一方だけを傷つける問題ではなく、韓日関係を傷つける外交的惨事」と述べ、合意は失敗で再交渉すべきだと主張した。

また「『合意妥結』という言葉は、韓国と日本両国の国民が皆納得した時に使える言葉だ」とし、「最終的かつ不可逆的」と盛り込まれた合意を批判。「日本政府が真摯(しんし)な謝罪をし、責任をすべてとるまで努力する」と日本側のさらなる対応を求める考えを表明した。

在韓米軍への迎撃ミサイルシステム「終末高高度防衛(THAAD)ミサイル」配備問題について、安氏が配備反対から賛成に転じた理由に関しては「両国の公式合意前は国内での議論や中国に対する説得が必要として、韓国政府に慎重な対応を求めてきたが、(現在は)配備が履行されている」と状況の変化を説明。現状では「中国などの協力により北朝鮮の非核化が進展するなら、その後THAAD配備撤回を(米側に)要請することを検討する」と述べ、まずは中国に北朝鮮非核化に向けた努力を求めていくとした。

一方、安氏はベンチャー企業を創業した経歴などから「変革」を掲げてきたとアピール。政治経験不足などから、やや迫力不足との指摘があったが「声が少し弱いと考え、インターネットで発声に関する動画を見て練習した」と明らかにし、自らが変わることで国政改革にあたる姿勢を強調した。

革新票意識し政策修正
【ソウル米村耕一】安氏が慰安婦合意の「再交渉」まで言及したのは、これまでの発言に比べ踏み込んだ内容だ。6日に開かれた韓国メディア主催の討論会では「元慰安婦のみなさんの意思が反映されるよう(合意を)修正すべきだ」と述べるにとどめていた。

表現が強まった背景には、支持率でトップを走る「共に民主党」の文在寅(ムン・ジェイン)氏(64)との差が開きつつある情勢が影響した可能性がある。中道勢力の結集を目指す安氏は、THAAD配備支持を打ちだし保守票獲得を図る一方、日韓合意に反対する革新系有権者を意識し、合意への批判をより強めたとみられる。

ただ、安氏周辺には、日本政府が同意しない再交渉は困難との認識はある。安氏は書面インタビューで自身の政治スタイルについて「国内の支持率を高めるために現実性の欠けた政策を立案したことはなく、今後もしない」と強調しており、当選した場合は、現実的な判断をする可能性も排除できない。