人模様
女性たちの声に耳傾け 鄭栄桓さん

毎日新聞2016年6月25日 東京夕刊

「被害を受けた女性たちの名誉回復がなされてこそ真の和解が可能になる」と明治学院大准教授の鄭栄桓(チョンヨンファン)さん(35)は主張する。慰安婦問題を題材にした新著「忘却のための『和解』」(世織書房刊)の出版記念セミナーがこの春、東京で開かれた。

千葉県生まれの在日朝鮮人3世。祖父は日本の植民地支配時代に今の韓国の慶尚南道からやって来た。そうした自分のルーツもあり歴史学の道へ進んだ。

自著では日本の言論界で一定の評価を得た「帝国の慰安婦」(朴裕河(パクユハ)著)を取り上げる。戦争遂行のため「愛国的になれ」「日本人になれ」と言われた朝鮮人慰安婦を通して「植民地支配とは何かを考えた」(朴さん)という。これに対して鄭さんは「愛国的あるいは日本兵と同志的関係にあったと言うのは兵士から見た慰安婦像。それを女性たちの声であるかのようにとらえるのは問題だ」と指摘する。「まずは日本政府が加害の事実と向き合い、法的責任を認めること。そこから新たな未来が築かれる」と説く。【明珍美紀】

http://mainichi.jp/articles/20160625/dde/041/070/054000c