【コラム】慰安婦問題、「佐々江モデル」が答だ

両首脳が国際会議で会っても牛鶏見つめるように、外相がまともな会談を1度もしていない今の韓日関係をこれ以上放置できない。韓日関係に凍りついている間に、安倍首相の日本は米国の中国包囲網の銃を担いで集団的自衛権行使を決め、北朝鮮とは拉致問題解決と対北朝鮮制裁解除を対等交換する実利外交の道をひた走っている。しかし日本との会話の扉を閉じてかけている韓国政府は、日本に不平不満をひと言言うような状態ではない。せいぜい両国の外交部局長級の役人たちが会ってはいるが、慰安婦問題は外交を離れ大きな政治問題になってしまって久しい。

韓日の不和は、米国の東アジア戦略にとってアキレス腱だ。インドや豪州から東南アジアを経て北東アジアに至る中国包囲網で韓半島(朝鮮半島)という核心の輪が断絶している米国の東アジア戦略構図は、不明瞭な未完として残っている。それで米国は日本には韓日関係の改善を促し、韓国には韓日米の三角安保体制に入るよう圧力を加える。米国の圧力でないにしても日本は米中、日中対決の天秤の皿に韓国の力が中国側にのせられると心配する。安倍首相が朴槿恵(パク・クネ)大統領と会談をしたい理由だ。

しかし朴大統領の立場は依然として強硬だ。安倍首相への信頼がないからだ。安倍首相は二枚舌を持っているかのように、一方の口では韓日関係の修復を言いながら、別の口では河野談話と村山談話の再点検を指示して韓半島有事の際に在日米軍が紛争介入する時は日本の同意が必要だという刺激的な話もはばからない。こんなプレーを繰り返す人と会って首脳会談をしても、そこにどんな意味のある合意が出てくるのか、出てきたとしてもまともに守られるのかという疑いは、経験的にも当然のことだ。それにもかかわらず両国の最高指導者が慰安婦問題を政治的に解決して関係を修復することが北東アジアの地政学的な命令だ。韓国も北朝鮮問題を抱えて中国だけに寄り添うことはできない。

慰安婦問題解決の1つのモデルは出ている。李明博(イ・ミョンバク)政権時期である2012年3月、民主党野田政権の佐々江賢一郎・外務次官が3項目の案を持ってきた。慰安婦問題について(1)日本の首相が公式謝罪をし(2)慰安婦被害者に人道主義名目の賠償をし(3)駐韓日本大使が慰安婦被害者を訪問して首相の謝罪文を読み、賠償金を渡すという内容だった。

国家責任の認定と謝罪を要求した韓国政府は、佐々江3項目のうち第2項の人道主義的な賠償を受諾できなかった。交渉の末に日本が人道主義的賠償を謝罪金と名称を変えて、さらに専門家らが慰安婦問題の真相を究明して後世の教育に反映するという項目まで追加する案を作って妥結直前まで行った。しかし今回は日本の野田首相が突っぱねた。内容のためでなく、その案を積極的に主導した韓日平和議員会の日本側の斉藤勁代表が出すぎたのが不快だったからだという。そのうち12月に衆議院が解散し、総選挙での自民党勝利で安倍氏の自民党政権に変わり佐々江3項目は冬眠状態に入った。

佐々江モデルは与えられた状況の中では最も現実的な解決策だったと評された。野田元首相よりも安倍首相ははるかに妥協性が低く、はるかに歴史修正主義的で民族主義的だ。彼が佐々江モデルの活用に同意するかは確実ではない。朴槿恵(パク・クネ)政権の考えも未知数だ。しかし両国政府が、韓日関係がこのままではいけないということに共感するならば佐々江モデルから出発するに値する。韓日対立の中心には日本の歴史認識があり、その歴史認識の核心は慰安婦問題だ。これを解決せずには一歩も前に出て行けない。

日本問題の権威者である国民大学の李元徳(イ・ウォンドク)教授は、慰安婦問題を議題にしたワンポイント首脳会談を提案している。11月のミャンマーASEANプラス3首脳会議や同じ頃に中国で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の時に、朴大統領と安倍首相が会ってお互いの胸の内を確認し、大きな枠組みの合意をしておいてから、来年に本格的な首脳会談を開いて最終的な仕上げをしようという構想だ。今は、それ以上の方法はない。

国内から「それでは不十分だ」という反発がありうるが、朴大統領が7・30再・補欠選挙でセヌリ党の圧勝により大幅に強化された政治的な位置づけで、国内の反発勢力を十分に説得できるはずだ。新しい駐日大使に職業外交官の代わりに政治家を任命したのも、韓日関係の改善に対する朴大統領の確固たる意志の表現と読み取れる。韓日関係をこれ以上放置できないというコンセンサスを背負った政治家大使には、職業外交官が陥りやすい枠にはまった思考を跳び越えるような創発的な活動が期待されている。

金永熙(キム・ヨンヒ)国際問題論説委員

中央日報日本語版 2014.8.1

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