慰安婦合意で韓国が検証結果 「問題再燃するほかない」
ソウル=武田肇2017年12月27日15時16分

 慰安婦問題の最終的かつ不可逆的な解決をうたった2015年の日韓合意の交渉過程などを調べていた韓国の外相直属の検証チームは27日、検証結果を発表した。合意をめぐる交渉は朴槿恵(パククネ)大統領(当時)と安倍晋三首相の側近2人による「秘密交渉」で進められ、元慰安婦の意見が十分反映されなかったと指摘。「政府間で最終的・不可逆的解決を宣言したとしても問題は再燃するしかない」と指摘した。

 有識者らで構成された検証チームの報告書によると、一連の交渉は朴政権の大統領秘書室長だった李丙琪(イビョンギ)・元駐日大使と安倍首相のブレーン、谷内正太郎・国家安全保障局長による非公開の「高官級協議」で進められ、韓国外交省は「交渉の脇役」だった。外交省は交渉過程の一部を慰安婦支援団体に説明していたが、韓国側にとって不利な部分については言及しなかった。

 また、合意には、岸田文雄外相(当時)と尹炳世(ユンビョンセ)外相(同)が記者会見で発表した内容のほかに「非公開の内容」があったと指摘。非公開部分では、日本側は韓国政府に対し、ソウルの日本大使館前に慰安婦問題を象徴する少女像を建てた市民団体「韓国挺進(ていしん)隊問題対策協議会」(挺対協)を説得する▽第三国での元慰安婦の追悼碑設置などを支援しないことを約束する▽国際社会で「性奴隷」という表現を使わない――の3点を要求。韓国側は消極的ながら受け入れていたとし、「不均衡な合意が一層不均衡になった」と結論づけた。

 検証チームは、合意について「大多数の国民が情緒的に受け入れられない」とする文在寅(ムンジェイン)政権が7月に発足させた。「検証結果は政府方針に必ずしも直結しない」(康京和(カンギョンファ)外相)との立場を示してきたが、検証チームが合意を「不均衡な合意」と位置づけたことで、韓国世論が一層硬化する可能性がある。

 一方、日本政府は一貫して合意の履行を主張している。合意について否定的な評価を盛り込んだ検証結果の発表で、日韓関係がさらに悪化する可能性もある。

 両国の合意に基づき日本が10億円を拠出して設立された「和解・癒やし財団」は、元慰安婦に1人約1億ウォン(約1050万円)、死亡者に1人約2千万ウォン(約210万円)の現金支給事業を進めている。合意時に存命だった元慰安婦47人中36人と死亡者199人中68人の遺族が事業を受け入れており、すでに多くが現金を受け取っている。(ソウル=武田肇)